江戸のデリバリー⑫ 初物好きな江戸っ子


《十二ヶ月の内 
 四月ほととぎすかつほ》
 溪斎英泉


我先に「初物」を
江戸っ子の見栄っ張り
その象徴とも言えますね。
上方にはない江戸での
初鰹人気の
理由とは!
一つは、
寒さから解放された陽春が、
北上して相模湾に入ってきた
鰹の脂ののった旬
と一致。
二つ目は、
鰹は江戸城献上物
お膝元で人気があった。


《江戸自慢三十六興
 日本橋初鰹》
 歌川二代広重(風景)
 歌川三代豊国(人物)


「勝つ魚」として縁起良く、
食べると75日長生きとも…

《江戸じまん名物くらべ
 こま込のなす》歌川国芳


初物熱はヒートアップし、
料理茶屋の八百善では、
正月に茄子を出したとか…
寛文期(1661-1673)に
なってくると、
37品目の売買時期が
決められた鰹は4月。

《卯の花月》 三代 歌川豊国

魚屋を待てずに、
品川沖に船上で鰹船を
待ちかまる者まで。
山口素堂
「目には青葉
 山ほととぎす 初鰹」

幕府の「初物禁止令」は、
たびたびお触れ出し…
「喉元すぎれば」
江戸っ子はこんな川柳も、
「初鰹 銭と辛子で 二度涙」。

《十二月の内 卯月 初時鳥》
 三代 歌川豊国

男の初鰹売りが美人に
置き換わっています。
「女房を 質に入れても 初鰹」
愛想つかされたのかもね。

《初夢 一富士二鷹三茄子》
 礒田湖龍斎


富士を不死、鷹は高貴…
そして事を茄子

ナスは初物だけでなく、
旬の終わりである
「終わり初物」
有難がられたとも…
《職人尽絵貼りまぜ屏風》八百屋

初物にかける気概が、
藁で掛け小屋を作り、
堆肥の発酵する熱暖め、
野菜の促成栽培は、
こんな理由でも進んだとか。

《見立孟宗》
 鈴木 春信
 1765年

冬に筍が食べたいという
病気の母のために、
孟宗が竹林で天に祈ると、
筍が生えたという話に因む。
『廿四孝』は御伽草子に、
謡曲「孟宗」なども作られた。
美しい振袖を着た娘、
雪の降る中に裸足
"妄想" だけが広がるのは
ボクだけなんでしょうか?

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