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絵にみる和食通⑨ 季節の食・七草

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季節をいろどる食を綴ってきましたが、 年の始に食べるのは「おせち料理」。 おせち料理の「節 (せち) 」とは 「 節日 (せちにち) 」のこと。 節日のための料理すべてをさすのですが、 今では特に正月のために用意するものが おせち料理と呼ばれるようになりました。 「春興七福遊 七草」喜多川歌麿 画 (東京・太田記念美術館)  おせち料理が退屈になってきた頃… そんな言い方をしてはいけないのですが、 一年の無病息災を願って1月7日に 作られるのが「 七草粥 」。 俎板 (まないた) に七草の菜をのせ 「七草なずな  唐土の鳥と  日本の鳥と  渡らぬ先に  七草なずな  手につみ入れて  あみばし  とろき  ひつき  ちりこ  げにげにさりげなきようにて  物の大事は侍りけり」と... 六日の夜から七日の早朝にかけて、 俎板 (まないた) の上に七つの道具をそろえて 七草を叩き刻んだのが「 七草叩き 」 歳徳神の方に向かって叩いたのだそうです。 「春遊娘七草」歌川国貞 画 (東京都立図書館) 七種の道具というのもあって、   火箸・擂粉木 (すりこぎ) ・杓子・ おろし金・ 菜箸・火吹竹・割薪 など。 このときに唱える言葉が囃子歌「 七草囃子 」、 各地に伝わっているのですが、 地域によってさまざまなものが伝わるそうです。 七草にはこんな効能があるといわれます。 せり    消化を助け黄疸をなくす なずな   視力、五臓に効果 ごきょう  吐き気、痰、解熱に効果 はこべら  歯ぐき、排尿に良い ほとけのざ 歯痛に効く すずな   消化促進、しもやけ、そばかす すずしろ  胃健、咳き止め、神経痛 実は春の七草はすべて食せるけれど、 秋の七草はすべて 目であじわうものってのが、 面白いですね。

絵にみる和食通⑥ 熱燗がほしいとき 

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熱燗よりも 冷酒がお好みの虎次郎 ですが、 どうしても熱燗がほしいときがあります。 一つは「 てっちりの鰭酒 」、 もう一つは 寒いときの野球観戦での「 カップ酒 」。 「Beneath Maple Trees」奥村政信     (メトロポリタン美術館 ) 甲子園での観戦は基本的にビール。 内野席である1塁の アイビーシート 、 そして3塁の ブリーズシート には、 贔屓の売り子ちゃんが居てるのです。 お馴染みの売り子ちゃんができると、 野球観戦が一層快適になります。 たとえば... 試合前にお弁当を食べながら一杯、 虎の攻撃のときにビールを買うより、 守備のときに欲しいので... 次は「5回に来てね」とか。 そしてジェット風船スタンバイの「7回表」。 虎次郎はいわゆる7回裏の儀式?を やりませんのでその時に。 売り子ちゃんも暇やし、 タイミング的にウィンウィンの関係なのです。 「山海愛度図会 おしやくがいたしたい    長門かに 四十四」歌川国芳 なぜなら、 大学の時の虎サークルでは ジェット風船はご法度やったのです。 カタチが破廉恥だとか、モッタイナイとか。 理由はさまざまですが... イチバンの理由は風船で見えなくなるから。 今年からジェット風船を膨らますタイミングに、 「 ジェット風船のマナー 」なるものが アナウンスされるようになりました。 で…もとい熱燗の話を。 「 酒は燗、肴は気取り、酌はたぼ 」落語の枕... 「たぼ」は日本髪の後頭部のこと。 熱燗も昔の人は風情があるというか、 紅葉の落ち葉を集めてと風情を感じます。 熱燗の歴史は以外にも古く 平安時代より楽しまれていたとか。 李白の詩歌「 林間暖酒焼紅葉 」 (林間に紅葉を焚いて酒を暖む)に 影響されたのだそうです。 日本では一年を通して燗が 飲まれるようになったのは、 江戸時代中頃くらいのこと。 日本酒が大ぶりの桶で 製造されるようになったこと広まり、 湯煎方式が普通になって、 冷でやるのは少し下品と いわれていたのだそうです。 「人間萬事愛婦美八卦意 寒   すましの秋の月」歌川国芳 燗をつける美人が肩越しに見える柄鏡は ...

絵にみる和食通⑤ 天ぷら むまそう

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京阪や長崎で天ぷらは社会の 上層部へ迎えられたのだが、 江戸ではどちらかというと 庶民食だったといわれます。 浮世絵は月岡芳年の 「風俗三十二相 むまそう」。 明治に入ってからの大判錦絵なのである。 「むまそう」は「うまそう」。 天ぷらを箸でつまむ女が思わず、 目を細めて「うまそう」とつぶやく。 (嘉永年間女郎之風俗) 江戸で天ぷらの登場は、 武士社会ではなく屋台の食べ物でした。 それには 「家康の鯛の天ぷら死亡説」 が 影響していると言われています。 『徳川実録』にはこんな感じに... 『家康公は元和二年正月21日  駿河の田中(現在の藤枝市)で  鷹狩をしておられた。  そこへ茶屋四郎次郎が京より参謁して、  いろいろな話をしている中で、  家康公から近頃何か上方で面白いものはないかと  尋ねられたので、そうですね、  このごろ京阪の辺では鯛を榧(かや)の油で揚げ、  その上に薤(にら)をすりかけて食べるのがあります。  私も食べましたがなかなか良い味わいでした、と答えた。  ちょうどそのときに榊原内記清久より  能浜の鯛が献上されていたので、  早速その鯛で調理するように命じられ、  それを食べた。ところがその晩より腹痛が始まり、  急いで駿河の城に帰り療養するのだが、  一旦は治まったかに見えたが  ご老体のことでもあり  またぶり返しなかなか良くならない。  家康公も心を決めた様子に見え...。』 とある。 ここには「天ぷら」とは 一言も出てきてはいないのだが。 当時の料理書 『大草家料理書』や『料理物語』などには、 「鯛南蛮焼は油にて揚げる也」とか、 「鯛を焼いて豚脂で揚げた後  煮ると南蛮料理という」とあり、 家康が食べたのは“天ぷら”というよりも、 ”空揚げ“なのではないかと思われるのです。 「天ぷら死亡説」だが、 実は家康は亡くなる1ヶ月前に、 太政大臣任官の宣命を拝したのち、 城中で能楽を催していたのである。 その間衣冠束帯姿で、 病中の人とは見えなかったと記録がある。 「 鯛の空揚げ 」を食した後の 体調の不調はあったもの...

絵にみる和食通④ 季節の味4月かつお

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江戸時代になって江戸では、 初鰹を初夏の味として賞味し、 大金をはたいて着物を質に おいてまでもとめていたようです。 「十二ヶ月の内 四月」渓斎英泉 「 目には青葉山ほととぎす初鰹 」 有名な山口素堂の句。 鰹を手にする 女の向こうにもホトトギス。 「其まま地口猫飼好五十三疋」 歌川国芳(部分) 長谷川時雨の『 初かつを 』では この句をこう解説しています。 「これは土佐でも住吉でも、  自由にはめられる、  五月日本のいさぎよさだが、  鎌倉といふところに鰹の意義がある。  鰹は勝男に轉じ、  釣上げた姿もピンと張つてゐる強い魚で、  牛の角でなくては釣れないといふし、  大擧して寄せてくるといふところなど、  勝夫武士とこぢつけないでも、  その味と堅實さが、禪に徹し、  法華經にひたぶるだつた  鎌倉武士氣質に似てゐる。」 「猫の当字 かつを」歌川国芳 こんな句もあります 「 初鰹旦那ははねがもげてから 」 「はねがもげてから」は 飛ぶように売れる勢いの いいうちは買わないということ。 「 十二月の内 卯月十二月の内初時魚」 三代歌川豊国 「 初鰹煮て喰ふ氣では値がならず 」 「煮て喰ふ氣」は刺し身にできるものは 高いからとの嘆きがうかがえる。 「 初鰹玄関ふまぬ残念さ 」 鰹の高騰は 相当なものであったようです。 「書画五十三駅 小田原」芳虎 今では初鰹は生姜醤油で 食べることが多いのですが、 実は江戸っ子風は「からし」 。 「 初がつを 銭と芥子で二度落涙 」 「 梅にうぐいす鰹にはからしなり 」 「 春のすへ銭へからしをつけて喰い 」 通になると「山葵」ってことだとか。 いずれにしても“毒消し”を 添えてってことなのでしょうね

絵にみる和食通③ 名物に旨いもんあり

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「絵にみる和食通」3回目は、 名物に旨いもんあり... 江戸時代は基本的には 一般の旅はご法度でしたが、 いわゆる伊勢詣とかの 参詣道中はフリー 、 旅人の往来が盛んになると、 宿場には休息の茶屋に旅籠が形作らました。 「 赤坂 」広重画。 もともと宿屋は食料持参で自炊する いわゆる「 木賃宿 」 (きちんやど) だったのですが、 いつしか参勤交代の本陣にも台所が設えて、 同行する料理人が料理を 担当するようになったと思われます。 こちらは「東海道五十三次」 歌川広重の保永堂版。 「 鞠子 」の名物「 とろろ汁 」。 品川宿から数えて20番目にあたるのが鞠子、 とろろ汁を食べるの二人の旅人は、 十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に 取材するところだという。 こちらは同じ「鞠子」北斎の五十三次。 山芋や仏掌薯 (つくねいも) をすって、 味付けした汁にまぜて、麦飯にかけて食べる。 「 府中 」広重画 駿河国に城下町には 名物「 安倍川餅 」の看板がかかる。 静岡市西部を流れる安倍川河畔の茶屋の名物で、 つきたての餅をちぎって 砂糖入りのきな粉がまぶされたもの。 画面には餅をつく茶屋の女の人の姿と、 つきたてをくちにはこぶ旅人がみゆる。   「 岡部 」広重画 品川から21番目の駿河国の宿駅で、 難所で知られる 宇津ノ谷峠 の図。 『伊勢物語』には 「駿河なる宇津の山べのうつつにも  夢にも人にあはぬなりけり」とある。 峠の茶屋での団子が癒してくれたに違いない。 「 草津 」広重画。 東海道と中山道の分岐点にある大宿駅で、 天保14年(1843)の旅籠数は 72を数えたのだそうです。  名物「 姥が餅 」の看板がみえる。 「 桑名 」北斎画。 桑名は伊勢湾を臨む城下町で重要な宿駅。 揖斐川河口で養殖されていた蛤が特産。 「 その手は桑名の焼蛤 」の言葉があるほど 各地に名高い名産品として知られた。 松ぼっくりの火で焼くのがよいとされる。 で…「その手は桑名の焼蛤」とは? そんな事には騙されない。 そのような計略には引っ掛からない。 ってことですよ。

絵にみる和食通② 桜の宴

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満開の桜... 春の嵐で散る前に楽しまねばなりませぬ。 花より団子という言葉がありますが、 花見には宴がつきものですね。 花散らしの嵐もまた粋なものです。 で...和食通のお話を… 長い群雄割拠の混乱した 時代が一段落すると、 平和を謳歌し享楽する実力者がでてきます。 秀吉の醍醐の花見 が その分岐点なのかも知れませね。 「花下群舞図」部分 これは神戸市立博物館にある 「 花下群舞図 」 (かかぐんぶずびょうぶ) 。 右隻にあるのは 祇園社での花見 です。 毛氈が敷かれた酒宴の陣幕の裏手では、 酒宴の料理を準備する姿も見られます。 「武士の献立」より そして左隻には 上賀茂社 での宴の情景。 庖丁師(庖丁侍) が 描かれています。 彼らの姿は 「 酒飯論絵巻 」をベースにしており、 大きな俎板 (まないた) の上にのった魚を 真魚箸 (まなばし) で はさみ庖丁 を入れています。 鳥の臓物を取り出すところや、 小さな器で味見をしているところも... 中心には「風流踊」 (ふりゅうおどり) 。 実は切手にもなっておるのです。 こちらは 東京の出光美術館にある 「 四季日待図巻 」。 流転の絵師・ 英一蝶 が描いたもので、 数え年47歳からの11年間、 伊豆 三宅島で 流刑の身の作品と伝わります。 一蝶自身もかつて親しんだに違いない 都市の遊興の様相が 細かい筆づかいと淡色で表現されています。 場面は最終段の風流踊と台所の場面。 吹抜屋台法 や すやり霞 が 日本画の系譜に連なります。 歌川国貞画の「 青楼二階之図 」。 東京の 太田記念美術館 が持つもので、 吉原の一流の揚屋 (あげや) 「 月波楼 」往時が表現されています。 大廊下には客への贈り物の肴や酒などが その出番を待っています。 一般的には登楼客の料理は仕出し屋から 取り寄せられていたようです。 ただ「 ひやかし客 」なども 多く出入りしていて、 入郭者の腹ごしらえなどには  うどん・そば といった 麺類店が利用されたそうです。

絵にみる和食通① 酒の肴

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12月に公開されていた 「武士の献立」 江戸時代、将軍家や大名家には、 主君とその家族の食事を まかなっていた“庖丁侍”。 加賀藩の料理方である 舟木伝内 と、 優れた味覚と料理の腕を持つものの、 気の強さが仇となり1年で離縁された 上戸彩 演じる「春」との 実に微笑ましい映画でした。 和食が形づいたのは、鎌倉から室町時代の いわゆる武士台頭のころ。 質素で実質的な食生活が重視され、 また動物性食品が副食として再び 献立なったころに そのルーツが辿れると言われています。 奈良時代から平安時代にかけては、 米中心で副食として動物性食品が 食されていたようです。 ただ、仏教の普及にともなって、 殺生戒による食物禁忌の立場から、 獣たちは追放されたと伝わります。 「慕帰絵詞」巻二(南北朝時代) 「饗応料理」 とは、 酒や食事などを出してもてなすこと。 室町時代に確立された武家の礼法により、 江戸時代に発展したそうです。 公家の有職故実 (ゆうそくこじつ) の伝統から 武家の食事が尊ばれるようになり、 食事作法が発達したのだと言われています。 「酒飯論絵巻」(室町時代) 「上戸下戸絵詞」 という絵巻の一場面。 上戸 (じょうこ) 、中戸 (ちゅうこ) 、下戸 (げこ) の 代表として意見を述べる論争物。 上戸は酒の徳をあげ、 「魚鳥肴にて酒を飲たる口にても 弥陀の名号唄うれば不論不浄と捨てられず」と。 中戸は酒による醜態を非難する。 この絵巻別の名は「酒飯論絵巻」と呼ばれます。   室町時代には庶民のなかでも 米を 常食とすることが できるようになったそうです。 そうなると… 公家や武家は魚鳥肉を上等な食物にすえて、 魚を上位にそして 鳥を重視するようになったそうです。 職人歌合にはさまざま食材を 立売りする人の姿が描かれています。 『家中竹馬記』にはこうあります。 「魚は前、鳥は後也。  魚の中にも鯉は第一也。」 室町末期の応永のころの記録によると、 宮中では大鳥を白鳥・雁・雉・鴨、 小鳥は鶉 (うずら) ・鶴・雀・鴨に 限定していたそうです。 1989年に大阪市立博物館 (いまの大阪歴史博物館)で行...