江戸のデリバリー⑩ 出張修繕の職人たち


《職人尽絵詞》より鋳掛屋

虎次郎が小学生の頃までは、
「いかけぇー」と自転車に
修理道具をのせて来てくれる、
修理屋さんが居られましたわ。
鋳掛屋」は「鋳て かける」から
「いかけや」と呼ぶとか。

《職人尽絵詞》は江戸で暮らす
さまざまな職業の人々を、
鍬形蕙斎が3巻に描いたもの。
蕙斎は畳職人の子だったとか…
畳職人の図はより詳細なのかも。

幕府老中を勤めた
松平定信が発案したとされ、
上巻に大田南畝、
中巻に朋誠堂喜三二、
下巻に山東京伝が
詞書を添えています。


《江戸商売図会》 三谷一馬 画

七輪ふいごなどの
道具を持参してやって来た。
鍋や釜は重いから、
鋳鉄を溶かすため、
熱が必要ですから持参したのです。

『人倫訓蒙図彙』鋳掛師

鋳掛け職は17世紀になって、
自宅で作業する居職人と、
天秤に作業道具一式を携え、
依頼のあった家の
軒下で店を開く
渡り職に分かれたとか。

《職人尽絵貼りまぜ屏風》鋳掛屋

ちょっと身軽そうな鋳掛屋さん。
幕府は軒下6尺以下での
火気厳禁のお触れ
を出していて、
軒先で火を使う鋳掛け屋は、
軒下計測用に普通の
6尺天秤より長い
7.5尺天秤だったとか…
7.5尺は2.3メールくらい、
意識して描かれたのかは、
よく分かりません。

《世渡風俗図会》鏡磨

曇った鏡をぴかぴかに
磨いて町を回ったそうです。

《職人部類》鏡

当時の鏡は青銅の上に
水銀をメッキしたもので、
しばらくすると…
すぐ曇ってしまったそうです。

《職人尽絵貼りまぜ屏風》鏡研師

表面を砥石で研ぎ直し、
水銀、みょうばん、
そして…
柘榴や梅の酸などを
塗って磨きあげた。
簡易的な水銀メッキを
施したのだそうです。

道具箱の赤いのは柘榴ですね。

『人倫訓蒙図彙』継物師

図は木地の椀のようですが、
茶碗や瀬戸物の再生の
『焼継屋(やきつぎや)』
ってのも存在していました。
白玉粉と呼ばれるもので
接着し加熱して焼き直し…

《世渡風俗図会》に、
こんなのも見つけました。
「臼の目切り」
柳田 国男の同名著書
『臼の目切り』の一節…
「石臼の目がつぶれると、
 目に見えて能率が
 低下するものだが、
 これには石屋の持つ
 特殊な道具が入用だから、
 手細工ではどうもならない。

《茶ひき臼》
 鈴木春信

 それをある一夜
 家人の知らぬ間に、
 そっと来て目を立てて
 使いやすくしておいて
 下さる方があるというのだから、
 小さいながらこれも信仰である。」

《名誉 三十六合戦 源二綱》
 歌川国芳


弘法大師は十二年に一度ずつ
丑年に擂鉢に目を打たれると、
青森に残る信仰です。
「大師の立寄った家では
 身上がよくなると言って、
 今でもひそかに心待ちに
 している人もあるという。」

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