太子霊場めぐりvol.23 六角堂の見真大師とは?


六角堂の右に掲げられる扁額、
"見真大師"とあります。
こんな格言があるのだそうです…
「大師は空海にとられ、
 太閤は秀吉にとられ」
「大師は弘法に奪われ、
 太閤は秀吉に奪わる」


紫雲山頂法寺は天台系単立寺院ですが、
如意輪観音を本尊とし、
観音信仰の信仰が篤く、
京の七観音西国三十三所観音といった、
観音霊場として六角堂が名を連ねます。

仏教の六道輪廻によると、
人間が輪廻を繰り返す際に
生まれ出る世界が6つあり、
仏道に入って悟りに至らなければ
六道を永久に回り続けるのだと…
聖徳太子御遺跡霊場のほか、
西国三十三所、
洛陽三十三所観音巡礼

札所でもあります。
年の瀬で茶屋は閉まっていましたが、
納経所では長い朱印の列がありました。

方位の四方八方を倍にした数は十六
六角堂の十六羅漢は愛嬌のある姿、
和顔愛語」を実践しています。

優しい顔つきで、
穏やかに話をするように…

十六羅漢さんたちは六角堂を
見上げていまいた。
和顔愛語」とは『大無量寿経』にあり、
無財(むざい)の七施(ななせ)の中の
布施行のひとつでもあるそうです。
無財の七施とは…
財がなくてもできる七通りの布施のこと。

十六羅漢のそばにある"一言願い地蔵"。
少し首を傾けている姿は、
お参りに来た人の願いを
叶えてあげようかどうしようか、
と考えておられるお姿とか…
一つだけの願い事をお願いしました。

階段を上がると…親鸞のお姿
比叡山で修行していた親鸞は、
1201年(建仁元年)29歳の時、
六角堂に百日参籠するという
誓いを立てられたそうです。
聖徳太子を深く尊敬していた親鸞は、
太子ゆかりの寺院として、
六角堂に思いを寄せたとのこと。
夜になると比叡山を下りて六角堂に籠もり、
朝には山に戻る繰り返しだったといいます。

親鸞堂には草鞋を履いて
比叡山から六角堂へ向かう姿

もう一体は六角堂に籠もって
如意輪観音から夢の中でお告げを
受けている親鸞の姿
がありました。

大師とは中国や日本において、
高徳な僧に朝廷から勅賜の形で
贈られる尊称の一種ですが…
ただ大師といえば弘法大師空海のこと、
親しみを込めての"お大師さん"だと、
ほぼ例外なく弘法大師を指します。

空海以外の開祖たちも、
朝廷から大師号を贈られていて、
融通念仏宗開祖の良忍は聖応大師、
浄土宗開祖の法然は円光大師、
曹洞宗開祖の道元は承陽大師、
日蓮宗開祖の日蓮は立正大師、
黄檗宗開祖の隠元は真空大師、
それぞれ大師号の宣下を
受けているのです。

見真大師とは親鸞のことですが、
この大師号は1876年のこと
明治天皇が東西両本願寺を始めとした
真宗各派に宣下されたものでして、
かなり新しいものなのです。
明治時代になっての宣下は、
贈る側の都合
ではなく、
真宗サイド…とりわけ
東本願寺の事情によるものでした。

江戸時代は東本願寺が
神君お引き立て」の教団。
徳川家由縁の浄土宗の増上寺
知恩院などと同等以上の特権が
東本願寺に与えられていました。
それに対して西本願寺は、
浄土真宗の本家本元として、
朝廷の定めた格式では
東本願寺よりも上とされながらも、
東本願寺の後塵を拝していたのです。

明治新政府と親密関係の西本願寺に対し、
東本願寺の取った行動が、
宗祖親鸞への大師号奏請運動でした。
「宗門の社会的な地位を
 確固としたものにするために、
 是非大師号が欲しい。
 宣下で門徒が沸き立てば、
 財政の窮迫を切り抜ける
 突破口にもなるはず」と…

戦後になると信教の自由を守れの
主張の高まりが興って、
一部の真宗大谷派僧侶から
「朝廷の弾圧によって流罪にされながら、
 念仏一筋の信仰を貫いた
 親鸞聖人の遺徳を偲び、顕彰するのに、
 天皇から与えられる
 大師号は相応しくない」
などと…
真宗本廟の御影堂正面の軒下に
掲げられている「見真」勅額
下ろすべきであると主張されるように
なってもきたのだそうです。

太閤も大師と同じように日本史上、
近世以降は太閤といえば例外なく
秀吉一人のみを指すようになります。
太閤秀吉を辿る」でも綴りましたが、
歴史においてその評価は目まぐるしく
変化をしてきたのです。

見真大師御詠歌の扁額…
「寒くとも たもとに入れよ 西の風
 弥陀の国より 吹くと思えば」

寒くても西から吹く風が
袂に入るのを拒まないでほしい。
阿弥陀様の国から吹いてくると思うから。

京という地は、徳川よりも豊臣を…
そして東京への"遷都"も、
京の人は江戸への行幸
だと…
「京都の人はへそ曲がり」
"へそ"と呼ばれる地で眞を見る…
そんなお話を綴りました。

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