蟇股彫刻を往く① 御香宮神社


蟇股って知っていますか?
神社仏閣の建物の梁上において、
上からの重さを受け、
下に重さを分散させる部材。
カエルが足をを広げた形なので、
蟇股 (蛙股)と呼ばれています。

御香宮の拝殿の装飾彫刻は、
実に秀逸で軒唐破風に加えて、
正面・後方にそれぞれ6ヶ所、
左右側面にも3ヶ所ずつの
蟇股彫刻がみられます。

一番のお気に入り「竹に虎」
コミカルな表情が若冲の虎
通じているようにも見えます・

鷺と見間違えやすいが""、
コウノトリのこと。

日本では近代まで鴻と鶴の
区別があまりなかったらしい。



は左右に二つ置かれています。

こちらは子育ての図、
松との組み合わせなので鷹。

こちらは御香宮境内にある
東照宮の鷹の蟇股
やはり松の枝に留まる。

この組み合わせ…
動物を装飾表現するとき、
一定の約束があって
「唐獅子には牡丹」
なのです。
唐獅子に牡丹を配する理由は、
百獣の王百華の王 牡丹
唐獅子は牡丹の匂いに
酔いしれるからとも…
この唐獅子は正気のようですね😁

牡丹も単独で蟇股…
唐獅子のは開花していませんが、
葉が3裂しているので牡丹だと。
つぼみは球状であることも、
見分け方のひとつ。

御香宮の拝殿の装飾彫刻には、
いくつかの不思議があります。
その一つがこの鳥…鸞 (らん)?
『修理報告書』ではシャクヤク?
葉の形から芙蓉なのだそうだ、
芍薬の葉は五裂ではない…
ちなみに"鸞"は伝説の瑞鳥。

『和漢三才図会』には…
「鸞は神霊の精である。
 赤色で 五采の鶏の形をしており、
 鳴き声は五音に合っている。」
そして「鸞は鳳に次ぐ鳥である」と、
ただあまりも知られていない存在。

親猿が小猿に栗を与えています。
十二支の九番目、方位は西南西、
旧暦七月を司るのだが…
西側の中央に刻されているが、
ほかの十二支は見当たりません。

猿を中央に対峙するのが、
桐とペアの鳳凰
ただ…鸞は鳳凰の間に、
猿がいるのかフシギです。

瑞鳥

鴛鴦 (オシドリ)
沢瀉 (おもだか)が添えられる…

眼の周りの白さから目白
実をつけたともに。

甲羅の上に蓬莱山、
橘と松の木が頂く。

もうひとつの蓑亀

紫苑 (しおん)
キク科シオン属の多年草。
女房装束の袿の重ねに
用いられる襲の色目の一つ、
かつては馴染みのあるものでした。
拝殿唯一の人物図像…
中国二十四孝のひとつ孟宗
『今昔物語集』にもこうあります。
「震旦の孟宗、
 老いたる母につかまつりて
 冬に筍を得たること

彩色は見られないが…
御香宮のもうひとつの
「孟宗の竹の子掘り」

秀吉が築城した伏見城
大手門を移築したと伝わる
御香宮表門には、
中国の故事「二十四孝」による
蟇股彫刻が4つ施されています。

「楊香 (ようこう) の虎退治」
父を襲おうとした虎に
立ち向かった勇敢な少女の
孝行物語で、虎も退散したとか。
図像では虎を追いかけるのみ、
父に危険が迫っているとは、
見受けられないのですが。

「唐夫人 (とうのふじん)」
「私の嫁の唐夫人の、
 これまでの恩に報いたいが、
 今死のうとしているのが
 心残りである。私の子孫達よ、
 唐夫人の孝行を真似るならば、
 必ず将来繁栄するであろう」
婦人が姑に授乳している姿
傍らの子どもの頭が落ち、
すこし傷んでいるのが残念ですが、
姑に歯が無いので乳を与え、
仕えていたとの孝行物語。

「郭巨 (かっきょ)の穴掘り」
祇園祭の山には郭巨山があります。
いずれも胡粉の白が残っていて、
もともとは彩色されていたとも…
伏見城にあった当初からあったのか、
移築時に加えたのか、
この4つの物語をなぜ採ったのか…

御香宮の本殿にも蟇股装飾。
蟇股以外は彩色装飾です。

こちらは背面の紅葉の蟇股は、
絵画表現がされていて、
彫刻ではないのです。


なぜ装飾彫刻を用いなかったのか、
資金不足という理由は、
天下の徳川家には相応しません…
これも御香宮蟇股装飾の謎です。

桃山天満宮の拝殿には、
親子丑の彫刻がみごと…
桃山文化の息吹も健在でした。



蟇股彫刻を往く…
また綴ります(・ω・)v

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