蟄からの蠢き~驚異の超絶技巧⑦


更谷富蔵《夏の記憶》

そろそろ虫たちが
出てくる季節ですね。
春の二十四節気には、
「立春」「雨水(うすい)」…
そして「啓蟄(けいちつ)」。
正阿弥《瓢に蜂花瓶》

その次は「春分」…
「清明」「穀雨」と続きます。
大竹亮峯《飛翔》

蟄虫とは…地中にこもって
越冬する虫のこと。
は「ひらく」の意。
大竹亮峯《勝虫》

織田信長の兜の前立て、
その一つに
トンボをモチーフに
したものがあります。
トンボは前に進めても、
背を向けて、
後退する事が出来ないのです。

古くは…
雄略天皇が吉野に出掛けた時、
アブに腕を刺されたのですが、
そのアブをトンボが咥えて
飛び去っていったとのこと。
敵を屠る味方というイメージ、
強くて縁起が良い虫の所以です。
本郷真也《柿に雀蜂》

本郷真也《葉に蟷螂》

ふたたびカマキリ
「蟷螂の斧を以て

 隆車の隧を禦がんと欲す」
という中国の故事がある。
足利義詮に挑んで戦死した
公卿 四条隆資の戦いぶり…
四条家の御所車に
蟷螂を乗せて巡行した
祇園祭の山鉾・蟷螂山の由緒。
高瀬好山《鍬形》


宗義《蜂》


満田晴穂《自在十二種昆虫》

自在という用語は実は新しく、
1983年の東京国立博物館で
開催の「日本の金工」展で、
原田一敏 東京藝術大学教授が
初めて使われたのだそうです。
明治以来の自在の技法を
しっかり受け継ぎ、
腹や顎など、
本来の昆虫が動く部分は、
ほぼ全て可動するとか。
まさに
蠢き」が自由自在
という代物なんだそうです。

満田晴穂さんは、
東京藝術大学の
彫金研究科に学んだが、
在学中に出会った、
高瀬好山の系譜を引く
京都の冨木宗行に入門、
明治工芸の超絶技巧の
遺伝子を引き継ぐ人。
さらなる挑戦を期待しましょう。

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