彫りもホッたり~驚異の超絶技巧④


いままさに舌をのばし、
蝸牛を腹へ納めようと
見下ろす蛙くん

三代 正直《釣瓶に蝦蟇》

釣瓶とは井戸から
水を上げるもの・・・
使い古されたのか、
削れて所々に穴が開く、
彼らの棲家になっている筈。

蝦蟇のイボイボ、
縄が取り付けられていた
鐶(かん)錆びた鉄釘
波状の木目や木の節まで、
すべてが木彫の技。
根付師の三代 正直

(1890~1946)の作と
考えられています。

加藤巍山《しかみ改》

武田信玄との戦に負け
逃げ帰ったときの家康
「しかみ像」を立体化。


《徳川家康三方ヶ原戦役画像》
コレのこと…
徳川美術館の収蔵です。

かなり凛々しい…
「しかみ像」にはいろんな
逸話が入り乱れていますが、
」というから、
家康の威厳を取り戻した
そんな風にも見えます。

久能山東照宮像にくらべ、
まさに改めて名誉回復です。

加藤巍山《恋塚》

源平合戦 遠藤盛遠の像。

夫ある袈裟御前に恋する…
思いを遂げるべく、
夫の寝所に忍び込み…
首は身代わりの御前のもの、
絶望の瞬間 鑿(ノミ)さばきで。

高村光雲《布袋》

光雲は明治維新後も、
牙彫に手を出さずに
木彫に専念していた人。
廃仏毀釈の真っ最中で、
仏像などの木彫が斜陽に...
「西洋彫刻のことにあこがれ、
 実物写生によって
 研究努力した後の
 木彫りであったから…」

光雲の新境地の
キッカケになった作品は、
これだったのかも知れません。

石川光明《元禄美人》
 清水三年坂美術館 蔵

野原貞明《蔬菜図文庫》

桑材に貝、緑に染めた鹿角、
象牙、べっ甲、黒柿など、
巧みに嵌め込まれています。
せり、すずしろ(大根)、
ごきょう、はこべらの四種、
春の七草ゆ。

旭 玉山《鶯図手箱》
旭 玉山の彫嵌の技が冴える。

旭 玉山《家鴨図文庫》懸子

懸子(かけご)とは経箱などの
縁にかけてはめる底の浅い箱。
インゲン豆は鹿角を緑に染め、
葉と茎はあえて金属で黒柿色で、
自然とインゲン豆に目が行く。

前原冬樹《一刻:皿に秋刀魚》


展覧会チラシにもこんなイラスト。

展示室の一番始めに置かれた、
「食べ残し」(笑)
ひょっとしたら、
猫へのおすそ分けかも。

前原冬樹さんは、
プロボクサー、サラリーマン…
そして32歳で東京藝術大学
油画科へ入学という異色経歴。
彫刻は独学だが、
着色技法は油画科の学歴が、
活かされているのかも知れません。

皿と秋刀魚は一体

なので…
秋刀魚の骨の下の空間は、
彫刻刀を下から差し込んで
彫り込んだってこと。
ココまで彫りますか(T_T)

展覧会は
あべのハルカス美術館にて、
4月14日までやってますよ。

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