春なのにお別れですか!~驚異の超絶技巧②


ゆるやかな風に身を任せる
蒲公英の綿毛が、
いまにも舞い上がらんと…
その一瞬。
鈴木祥太さんの手による
《綿毛蒲公英》

綿毛は極細の
真鍮線を束ねて冠毛部に、
鑞(すず)付けで接着。
綿毛の白い色は
酸化チタンを表面に付け、
茎の部分に一本づつ
埋め込んであるとか…

まさに旅立ちの春なのです。

えっ(T_T)頭蓋骨!!


高橋賢悟《origin as a human》

厚さは0.1mmの花びらたち、
花の中の水滴のような
小さな粒やおしべもしっかりと。

骨の上には数種類の
菊が添えられています…


ところで…

1960年代のはじめ、
アメリカの考古学者、
ネアンデルタール人が
花をそえて幼児を埋葬
大きな反響を呼びました。※1

《flower funeral: cattle》牛さん

「flower funeral」
とは花の埋葬のこと
極薄アルミ鋳造は
現物鋳造」と呼ばれる、
生きた花を型にする手法で
作られています。※2

石膏で型を取り…

電気炉で花を焼失させ、

そこにアルミニウムを
流し込んだそうです。
隙間なく全体に金属を
行き渡らせるために、
真空加圧鋳造機
駆使されています。

《flower funeral: french bulldog 》
フレンチ・ブルドッグとか…
前原冬樹
《一 刻:空き缶 、ピラカンサ》

打ち捨てられた錆び缶に
トキワサンザシともよぶ
ピラカンサ」。
散らばった葉とともに…
空き缶は檜、その薄さは超絶。
前原冬樹《一 刻:有刺鉄線》
絡みつく雑草…
一本の角材から
彫り出したとか。
橋本雅也《ダッチアイリス》
 高松市美術館 蔵
 
独学で技法を習得した
橋本雅也 さんの逸品。
彼の個展会場の壁面には、
弾痕の残った鹿の毛皮
展示されていたそうです。
橋本雅也 《タカサゴユリ》

橋本雅也 《キク》
 高橋コレクション蔵

2007年 彼はインドなどを
遍歴したのち、相模原市の
無住の寺に居を定めます。
知人の猟師の仕留めた鹿、
その肉を食べ、毛皮を保存し、
そして骨と角から
これらの作品を創り出した。
「縄文人の花の埋葬」の話に
戻ります。
イランのシャニダール
洞窟の埋葬地に
花粉が集中する場所
小山修三先生によると、
「花で飾るという心だけでなく、
 病や傷を癒やすという」
願いが込められていたとか…
鈴木祥太《桜》

超絶技巧の花*たち、
その素材とモチーフには、
「花の埋葬」に繋がるものを
感じました!!
花粉症に悩まされる虎次郎
でもが咲いて来ますよ!
咲く花散る花を愛でる。
そこからパワーをもらえる。
薬効は今でも健在です!!


※1 ネアンデルタール人の花の埋葬については、
「小山センセイの縄文徒然草
 第25回 ネアンデルタール人:花の埋葬」を参考にしました。

※2 髙橋賢悟さんの作品制作過程については、
美の巨人たち 髙橋賢悟「flower funeral(花葬)」
超絶技巧シリーズ(4) を参考にしました。

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