ひろしまのへいわ⑥ 支えられた聖堂


玄関扉、鐘、ステンドグラス、
パイプオルガンなど、
装備品はほとんどは、
海外からの寄贈によって
埋められています。

祭檀中央モザイク壁画の
「再臨のキリスト」は、
ドイツ ケルン市から。
ほとんどの聖堂には十字架か
復活者キリストの像なのですが、
再臨の姿は珍しいのです。

世の終わりの到来かのような
未曾有体験をした広島の人々に
未来への希望を与え、
苦しみや悲しみを癒し、
新たな勇気を与えるもの。
聖堂にふさわしいお姿です。

ベルギー からは、
「平和への門は隣人愛である」
刻まれています。
キリストの受難”をあらわす、
手・足の部分には
釘を打ちつけられた跡があります。

十字架を取り囲む四つの生き物は、
ヨハネの黙示録にある
福音史家のシンボル。
獅子はマルコ。

鷲のようなのはヨハネ

人間のような額を持つのはマタイ

そして若い牡牛はルカ

聖堂記…こちらはラテン語
反対の日本語にはこうあります。

「此の聖堂は、

 昭和20年8月6日広島に投下されたる
 世界最初の原子爆弾の犠牲となりし
 人々の追憶と慰霊のために、
 また万国民の友愛と平和のしるし
 としてここに建てられたり。

 而して此の聖堂によりて
 恒に伝へらるべきものは
 虚偽に非ずして真実、
 権力に非ずして正義、
 憎悪に非ずして慈愛、
 即ち人類に平和をもたらす
 神への道たるべし。

  故に此の聖堂に来り拝する
 すべての人々は、
 逝ける犠牲者の永遠の安息と
 人類相互の恒久の平安とのために
 祈られんことを。 昭和29年8月6日」

祈りの雰囲気を醸し出している
ステンドグラスも寄贈されたもの。
《喜びの神秘》のうち「ご降誕」。

シンプルな外観に比べて、
ステンドグラスのもたらす効果が
発揮されています。

絵柄は太い鉛桟で描かれています。

こちらは《苦しみの神秘》
イエスはゲッセマネで苦しまれる

イエスは鞭で打たれる
イエスは茨の冠をかぶせられる



そして《栄えの神秘》

「これらのステンドグラスは、
 オーストリア、ドイツ、
 ポルトガル、メキシコ、
 その他各聖母巡礼地から
 寄贈されたもので、

 制作は
 西ドイツのケーベラー市にある
 ハインデーリック・グラス工場
 なされ、
 設計はアーヘン市大学の
 ベンドリング教授
 によるものであった。」

建設後30年の年月が刻まれ、
コンクリート劣化と鉄筋の発錆。
そのための補修がなされました。

補修工事は1983年11月15に始まり、
1984年5月10日に完了しました。

石丸紀興さんの著に、
こうありました。
「原爆ドームの補修とは、
 本質的に異なることに
 気がつかねばならない。
 原爆ドームは、
もはや使用される建物ではなく、
 補修によって崩壊を喰い止め、
 半永久的に記念物として
 保存しようとされている。

 世界平和記念聖堂は、
 あくまで教会として
 使用される建物であり、
 補修は、その建物としての寿命を
 何年か延ばすためであった。

 今回の補修工事によって、
 寿命が何年延びたかについては、
 諸説あり、二十年とも、
 二十五年とも三十年ともいわている。

 しかし、いずれにしても、
 また、補修の必要な段階が到来し、
 遂には建物の生命を終えるであろう。」

※世界平和記念聖堂のブログは、
広島大学工学部教授 石丸紀興 著
世界平和記念聖堂―広島にみる村野藤吾の建築
相模書房 1988年 を参考にしています。

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