Randy Bass バース本塁打傑作選 VOL.4

Randy Bass バース本塁打傑作選 VOL.4

















1985年5月22日 対広島 6回戦

阪神狂走曲第44番
  「奇蹟」



1位阪神、2位広島 ゲーム差1.5で向かえた
甲子園三連戦。前夜、三本塁打を放ちながら、
先発工藤以下投手人が火だるまになり敗戦。
この夜も三回表に2点を追加され、
0−7と早々と劣勢にまわった阪神。
首位攻防第二戦のタイガースの奮起を期待して
ライトスタンドに陣取ったファンも苛立ち始めていた。

そんな中、バースがまずこの日
一本目の本塁打を川口から放ち。
「大逆転劇」の幕はあがった。
その後、佐野の二塁打で一点追加の3−7。

そして五回には、
「これで負けたら何を言われるか」と思っていたという
ミスター・タイガース掛布が川口からバトンを受けた
小林から追撃の一発。
こうなると「負ける気はしなかった」という
掛布の言葉はベンチの
ナイン全員の気持ちを表わしていた。

七回、真弓が小林のストレートをスタンドへ
運んだ頃から、ファンも夢の中を漂い始めていた。
バースがつないだ一死一塁で
前打席ホームランを打っている掛布。
ワンポイント・リリーフでマウンドに立った山本和の
インコースの球を腰を
うまく使ってタイミングをあわせる。
打球は右翼ポールを巻くようにして、消えて行く。
同点−−−−−−。
四回から自ら志願してリリーフに立った福間に
抑えられていた広島についに追いついた。

得点上の優劣は消え、
追う者の強さと追われる者の弱さが残った八回裏、
二死満塁で “ 大トリ ” バースがバッターボックスに
立った頃には、スコアボードの大時計の針は
規定時間をとうに過ぎ、十時を回っていた。

バースコールに球場はつつまれ、
応援旗が引きちぎれんばかりに打ち振られる。
一球目ボール、二球目はレフトへの大飛球が
ファールになっての川端が投じた三球目は、
バースの丸太のような腕で弾き返された。
「直球を思い切り叩いた」という打球は、
カクテル光線に照らされた長い滞空時間の後、
右翼席中段ではずんだ。

悲鳴、歓声、怒号が渦巻く中、
ダイヤモンドを一周したバースは、
ナイン総出の手荒い祝福を受ける。

以後「一気攻撃」「大逆転」といった大見出しが、
「ミラクル阪神」の勝利を報じる新聞の紙面を
賑わすようになっていった。



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