Randy Bass バース本塁打傑作選 VOL.1

好機到来
打棒爆裂
豪快無比
−−大逆転


カーネル校長帰還特別コラムとして、
ランディ・バース本塁打傑作選。
全5回にわたって掲載致します。

このコラムは虎次郎が大学時代所属していた
タイガースを応援するサークルで発行の、
『虎狂の詩』(とらきち の うた)の
第5号に掲載されたものです。
同級のHM氏の筆によるもの。

当時を知らない方も、ライブで見られた方も、
お楽しみくだされば幸いです。

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Randy Bass バース本塁打傑作選 VOL.1


1986年6月26日
 対巨人12回戦

破られた不文律











「日本は野球も保護主義−−。」
昨年バースが年間本塁打記録の日本記録へ挑戦した
巨人戦で四度に渡り、ストレートの四球で歩かされた
ことについて、米紙ニューヨーク・タイムズは
こう皮肉った。
「日本の政治家がニューヨークで
 大統領に市場開放を約束している時、
 日本では保護主義が今なお健在なことを
           示す事があった。」と。
「史上最高にして、最強の助っ人。」の称号を
与えられたバースではあったが、「世界の王」の
聖域侵入は許してもらえなかったのである。

それから8カ月後、今度は「七試合連続本塁打」
という形で、再度チャンスはやってきた。
巨人−阪神三連戦の初戦、話題の新人・桑田から
六試合連続本塁打を達成し、バース・フィーバーは
いやが上にも高まった。翌第二戦が雨で流れた後、
王監督は「バースとは勝負させる」ときっぱり言った。
そして第三戦、先発はエース江川。
バースも江川ならと思っていた。
「江川は常に打者をアウトにしようと
    向かってくる。その彼ならば−−。」

伝統の一戦は名に恥じぬ一転を争う好試合となった。
二転三転したゲームは七回を終って5対5の同点。
八回表二死、バースはこの日5回目の打席に立った。
制限時間を考えれば、
この試合この打席がおそらく最後になる。
「この日の江川は打てそうな気がしていなかった。」
バースは一、二打席こそ安打を放ったものの、
後の打席は外野にも飛んでいなかった。
「江川はオレのヨミを全て外してきた。
  ただ、内角へ来るのはわかっていた。」

二球目、江川の速球はその内角へ来た。バット一閃。
打球は一直線にのびて右翼場外の闇夜に吸いこまれた。
推定飛距離150メートルの弾丸ライナー。
絵にかいたようなメモリアルアーチに観衆は熱狂。
大一番で最高の本塁打を放ったバースは
決勝のホームを踏んだ。
「明日ベットで目覚めた時、
   もっとうれしくなるだろう。」
普段冷静な男が、珍しく興奮したのか、ベンチ前で
レフトスタンドへ両手を挙げて応えた。
試合後、王監督は
「みんなが要求している場面で
  打つのだからたいしたもの」
     と賛辞を送り偉業をたたえた。

AP電が
「サダハル・オーの持つ7試合連続本塁打の
 日本記録に、元3Aの選手が並んだ。」
 と打電したのは、
   それからまもなくのことである。

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