京もみじ特別拝観 本堂襖絵 「風河燦燦三三自在」
紅葉の名所の宝厳院の本堂には、
赤が基調の襖絵がおさまっています。
宝厳院のご本尊は、十一面観世音菩薩、
10面は菩薩修行の階位の"十地"を表し、
最上部は"仏果"を表すとされています。
十一面観世音菩薩をとりまくのが、
三十三体観音で観世音菩薩は
『観音経』に説かれるところの、
あまねく衆生を救うために、
相手に応じて変身される…
それが観音三十三応現身。
襖絵の作者は田村能里子さん。
寺院ではあまり例がない赤というより朱、
田村さんはこう話されています。
「私にとっては嵐山という大自然に
包まれた本堂の中は、
自然界の体内のようなものと感じ、
命が宿り燃えている色、
赤以外はありえませんでした。」と。
画材は麻布キャンバスに
アクリル絵の具が使われています。
アクリルは水に溶かしてつかうので、
油彩とは違って岩絵の具や墨に近いとも。
描かれたのは雄大な自然の山河と、
全体に流れる風紋。
燦々と輝く太陽と月…
そして黄漠と群青の空。
女性や老人、子供など…さまざまなポーズ
「これらは観音さまが変化したお姿と
感じていただいてもいいし、
身近な人の面影を探して
話しかけてもらってもいい。」と田村さん。
仏像にしろ絵画にしろ衣の皺というのは、
描くことは至難の業でもある…
日本を代表する彫刻家の佐藤忠良さん曰く、
「衣の皺は肉体を包んで
ひっぱりあっているんだ。
うめき声をあげてね。
僕はその声を聞き取ってやろうと
一生懸命皺をほっているんだ」
田村さんも"皺のうめき"を描いたという。
せせらぎの流れか…
庭の移ろいか…
襖の引き手もなかなかユニーク、
田村さんデザインの
象・牛・馬・ラクダ・鳥…
黄金色に仕上げられ、
襖にアクセントを放ち、
光を放っていました。
レプリカがあればゲットしたかった。
紅葉の"紅"という色は、
紅花が伝来"呉藍"と呼ばれ、
それが「くれない」となったという。
朱、丹、緋、赫と赤をふたつ続けるレッド、
日本の赤色はバリエーションが多い。
黄みを感じさせる緋 (ひ・あけ)、
朱も丹も鎧や宮殿、神社、
朱雀大路や緋縅鎧と強さを感じさせる色、
赤土は鉄と火を思い起こさせる。
「はっとするほど
迫力のある襖絵」
宝厳院住職の最初のことば、
そして…
「禅寺というのは本来は
派手なものなんですよ」と。
インドを発祥の地として、
シルクロードを通じて、
東西の文化を融合しながら
日本まで到った仏教と、
ひとびとの生活の、
長いときの流れ…
「タムラレッド」のパワー。
「風河燦燦三三自在」
襖絵に登場するのは三十三人の老若男女、
観音三十三応現身と符号しているのです。
新緑若葉の中の赤襖、
真っ赤に色ずいた紅葉の中の赤襖、
新雪に覆われたお堂の中の赤い色。
季節とともに自在に流れゆく…
※このブログは
田村能里子ウエブサイトミュージアムを
参考にしました。