日本人の嗜好をさぐる⑩ 紫陽花


《紫陽花に燕》 葛飾北斎

まもなくやって来るのかも…
梅雨といえば紫陽花。
でも戦前まではあまり
人気はありませんでした。
日本古来からの品種、
奈良時代から記録が遡れる、
にも関わらず人気がでたのは、
本当にここ40年ぐらいです。

《花競今様姿 紫陽花》
 歌川芳虎


その理由というか、
ヒントになるのが花言葉。
よく知られているのが、
"移り気" そして "浮気"、
土壌のphで花色が異なる。
酸性かアルカリ性か、
リトマス試験紙と同じで、
酸性土壌だと青くなり、
アルカリ性だと赤く染まります。

《当盛六花撰 紫陽花》
 三代歌川豊国・歌川広重


浮世絵や日本画でググッても、
ほとんどヒットしない紫陽花。
描かれるほとんどが青みを
帯びているのは、
日本では弱酸性の土壌が
多いからなのです。

《紫陽花郭公図》
 与謝蕪村


「岩くらの狂女
 戀せよ ほととぎす」

句が添えられた蕪村
珠玉の作品の一つ。
文化遺産オンラインの解説…
「空に鋭く啼き渡る郭公と、
 たっぷりとした墨色の葉に
 すがすがしい藍色の施された
 紫陽花が大きく描かれている。」
画題にあるのは 郭公=カッコウ
ホトトギスとは鳴き声は異なります。

《鳥と紫陽花》小原古邨

郭公の話を続けます。
平安時代では郭公は登場せず、
初夏になると農耕の合図、
時鳥と書かれます。
郭公には二つの読みがあり、
古典では「ほととぎす」としか、
読まなかっただとか…※


《東風俗福つくし 霧ふく》
 楊洲周延 1889年

あじさいの語源は「あづさい」、
"あづ" は 集まるの意、
"さい" は 真藍(さあい)から来る。
青い花が集まって咲くの意、
紫陽花は青と断定しています。

《紫陽花に翡翠》 歌川広重

日本の伝統色の紫には、
57色あって本紫青紫が、
アジサイの色といえるでしょう。
「紫陽花」としたのは、
平安中期の源順という人。
中国の白楽天の詩に登場する
「紫陽花」の特徴を、
ガクアジサイを同じ花と考え、
この字を当てたのが始まりです。

《花鳥画譜 紫陽花・鶤鶏》
 楳嶺


紫陽花の人気がなかったのは、
意外な理由がありました。
江戸期の植木屋から
少し嫌がられていた
とか…
というのも折った茎を土に
植えておくだけで、
株が増やせるアジサイ。

《東都淺草花やしき紫陽花》
 歌川広重


誰でも簡単に植えて花を
咲かせることが出来るのなら、
植木屋は商売上がったりです。

《三十六花艸の内 紫陽花》
 豊原国周

土によって年によって、
色づきが異なるというのも、
コントロールできない花
妖艶なイメージが
付いたのでしょうね。

《あじさいと美女》
 筒井年峰


幕末の紫陽花の
よく知られるエピソード。
シーボルトは お滝という
日本人女性と恋仲に、
学名を「Otakusa」にと…
別の学名があり認められず。

《紫陽花》河原崎奨堂

おしゃれな花屋では近頃、
ハイドランジア」なんて…
綴ると 【 hydrangea 】。
ギリシア語のを意味する
「hydro」と、
小さな器を意味する
「angea」が名前の由来。
ちょっと紫陽花と違うよね…
ちなみにフランス花言葉は
元気な女性」だとか…
アジサイのような
女性が好きです(・ω・)v
って言うのか(^_^;)


※カッコウとホトトギスについては、
 同志社女子大学 吉海 直人教授の研究コラム
「ほととぎす」をめぐって を参考にしました。

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