日本人の嗜好をさぐる⑪ サメとフカ


《魚づくし 日本橋の朝景色》
 三代 歌川豊国


江戸 日本橋の近くには
魚市場がありました。
天秤棒を担ぐ女性?
担ぎ手は屈強な男たちは、
あくまで持ち手なのです。
あきらかに鮫の姿

隠岐国産物絵図注書》より

日本近海には約120種類の
鮫がいるそうで…
古くから鮫とも鱶とも。
魚の博物事典』によると、
「サメとフカは同じもので、
 呼び名が違うだけ。」

因幡の白兎」のワニは、
鰐ではなく鮫のこと、
ワニはサメの古語で、
今でも山陰や北陸地方では
ワニと呼ぶのです。

《讃岐院眷属をして為朝をすくう図》
 歌川国芳


国芳の描く眷属は鰐鮫、
源為朝平清盛
討つべくとして荒波に、
そこに現れたのが、
巨大な鰐鮫…
皆は鰐鮫の背に乗り
琉球に逃れたという物語。

《本朝水滸伝 剛勇八百人一個
  宮本無三四》
 歌川国芳


こちらは退治される鮫。
ただ…各地には鰐鮫は、
龍宮からの神使であったとも。
古文書に遺る話には、
因幡の白兎も話を辿れば、
ワニを騙してまんまと
渡って来たのウサギの方

騙したことを白状…
「すっかり丸裸」のワケ
は、
ウサギはまさに自明のこと。

ライデン国立自然史博物館
 コレクションより

崇敬を篤めていたサメ…
不思議なことに、
干して食べる習慣
あわせて残っているのです。
鮫の干物の食習慣は、
山陰の一部と伊勢志摩だけ、
ここに出雲と伊勢の繋がり
見る識者も少なくないのです。

隠岐国産物絵図注書》より

サメの肉は半平や蒲鉾など
練り製品の材料となりました。
珍重されフカヒレ以外は、
魚の縁遠い場所へ…
中国地方の特に山間部では、
今もサメ肉が食されます
ただ鮮度が落ちると独特の
アンモニア臭が発生して、
好き嫌いが分かれるとか。

ライデン国立自然史博物館
 コレクションより

広島の山間部では
「正月 にワニを食べないと
 正月が来ない」
と…
そこには一尾全体
"捨てるところなし"との、
食用価値や薬効とともに、
海魚を食べたいという
信仰心に似た思いが
あったのかも知れません。

人倫訓蒙図彙》より薬種屋・鮫屋

鮫皮といえば"おろし金"、
サメの歯や椎骨は、
加工され装飾品としても
使われてきました。
縄文時代から食用として
漁撈対象でした…
サメ漁撈の危険性や
サメの強さもあり、
価値を見出してきた歴史が
継がれてきたのです。

魚形線刻画土器」

山深い長野県の飯山市で
発見の縄文土器には魚ではなく、
シュモクザメの線刻あり。
英名は hammerhead shark
T字形の撞木に由来します。

隠岐国産物絵図注書》より

鼻の穴は眼のすぐ内側にあり、
左右の眼と鼻の穴が
大きく離れているのです。
大きなメリットは、
視覚も嗅覚ともに広範囲
情報を捉えられること。
そして生物電流を感知する
ロレンチーニ器官」があり、
サメ独特の「第六感」…
透視能力に長けているとか…
サメにはフカ〜い秘技あり


※このブログは沼口麻子さんの『ほぼ命がけサメ図鑑
 講談社 2018年 を参考にしました。

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