日本人の嗜好をさぐる⑨ 潮干狩
《江戸名所 品川沖汐干狩之図》
歌川重宣
陽射しを感じる機会が
希薄な2020年…
潮干狩りでさえも蜜とな。
1838年刊の『東都歳事記』、
「汐干 当月より四月に至る。
其内三月三日を
節 (ほどよし) とす」、
でベストは3月3日とか??
『風流五節句遊』
柳谷
3月3日のといえば…
ひな祭りですが、
実は潮干狩りとの
深い関係があって、
干満の差が大きい「大潮」
その時期に重なることに
関係しているのだとか。
《潮干のつと》 喜多川歌麿
貝合わせには蒔絵や金箔で、
装飾された蛤を使用します。
対になる貝を違えない
ところから夫婦和合に…
《東都三十六景 洲ざき汐干狩》
歌川広重
上巳の節句は、
平安貴族たちの
無病息災を祈る儀式。
厄災や穢れを託した
ヒトガタを川や海などに
流すというもの…
流し雛が雛まつりがルーツ、
よく知られている話です。
《江戸名所 品川沖汐干狩之図》
より一部
沖縄では今でも
ハマウリ(浜下り)という行事が
旧暦の3月3日に存在します。
一家総出で海岸へ行き、
潮干狩りをするほか、
女性たちは潮に手足を
浸して穢れを祓うとか…
《江戸名所 品川沖汐干狩之図》
より一部
今や高級貝になりつつある
ハマグリは江戸湾には多く、
天ぷらの屋台でも
蛤の天ぷらが1串4文、
今でいうと100円あたりで、
売られていました。
絵には女性の袂で、
何かを抑える姿。
《東京名所四十八景 洲崎乃汐干》
歌川一景
運がよければ時には
こんな大物も…
そうヒラメです。
《潮干狩》 歌川豊国
こちらの竿には蛸も…
《洲崎汐干図》
歌川国貞(のちの三代豊国)
魚籃(びく)から飛び出した
鱏にぶつかり転ぶ姿。
「左ヒラメの右カレイ」の鮃も、
江戸中期までは区別が明確でなく、
1775年刊の『物類称呼』には
「かれい・ひらめ、
畿内西国ともに かれい と称す。
江戸にては大なる物を ひらめ、
小なるものを かれいと呼ぶ。」と。
《足利絹手染の紫 十二月の内弥生》
三代 歌川豊国
潮干狩りは水に入るので、
女性も裾をたくし上げたり、
袖をたすきがけにして
貝掘りに精を出しました。
「汐干小袖」と呼ばれる
潮干狩り用の短い小袖も
あったそうで、
やや露出度は高めになったとか。
《江戸自慢三十六興 洲さき汐干かり》
歌川国貞
気分も開放的になったとか…
潮干狩りが男女の出会いの場と
なることもままあったそうです。
《東都三十六景 洲さき汐干狩》
歌川広重
いったん潮が満ちると、
時を忘れて潮干狩りに
夢中になると一人ぼっち(T_T)
江戸中期の 高井几董の句
「落かゝる
日に怖気だつ 汐干哉」。
潮干狩りも男女のことも…
潮目にはくれぐれも、
気を配ららねばなりませぬ。
「落かゝる
日に怖気だつ 汐干哉」。
潮干狩りも男女のことも…
潮目にはくれぐれも、
気を配ららねばなりませぬ。