日本人の嗜好をさぐる ① お刺身


《風俗三十二相 おもたさう》
 月岡芳年

日本人は魚食の民族と
よく言われますが、
「日本人は本来、準菜食民族」
伝承料理研究家である
奥村 彪生さんの言葉です。
日本人が魚食民になったのは、
1955年頃からだったそうで、
1970年ぐらいを境にして
魚離れをして肉嗜好、脂嗜好に。

《浮世五色合 赤》
 3代目歌川豊国 1844年

赤身魚ようにみえるが…
鮪なのでしょうか?
画中にある式亭小三馬の
戯文中にあるのは「あかめ」、
これは白身魚ですから、
戯文の「赤尽くし」に
沿ったものなのでしょう。

《小魚の中の鮪の涅槃像》
 歌川芳員


大きな盤台に横たわるのは、
釈迦に見立てられた鮪。
万葉集』にはシビの名で見られ、
古くから食用でしたが…
江戸中期の『飛鳥川』によると、
「昔はまぐろ食(くい)たるを、
 人に物語するにも耳に寄て
 ひそかに咄(はなし)たるに、
 今は歴々の御料理に
 出るもおかし」。
真黒」と書くとか…
肉が黒ずんだ赤色と
評されていたのです。

『肉筆画帖』《塩鮭と鼠》
 葛飾北斎

魚食民への1つは北の文化、
そうアイヌ食文化です。
四季の恵みで、
暮らしを成り立たせる。
鮭も次に捕れるまでは、
必要な分だけ捕って保存。
《料理をする母娘》
 喜多川歌麿

お刺身には何をつけますか?
刺身醤油というのが、
ありますが定番化は、
江戸後期のことで、
それまでは酢だったそうです。
薬味はワサビというのも、
いまでも「けん」として
添えられる大根も薬味として、
好まれていたそうです。
《江戸名所百人美女 呉服ばし 》
 三代 歌川豊国

火入れをしないお酒は、
放っておいたら酢に…
酸っぱくなり
難酒(からさけ)」へ、
うまく酢酸発酵すると
吉酢(よしず)」とされます。
《東都高名会席盡 祢太郎》
 豊国三代 広重初代

ワサビに茗荷…
散らされるのは穂紫蘇かも。

《猫の鰹節渡り》
 歌川広重 1842年

鰹節はかつて、
伊豆諸島から奈良まで
運ばれそうだそうです。
鰹節の煎汁なども、
醤油登場以前は、
塩辛さを演じていたの
かも知れません。

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