日本人の嗜好をさぐる⑫ ふぐ
《狂斎百図》より
小坊主に天狗八人
河鍋暁斎
フグのちり鍋は"てっちり"、
フグは当たったら命がない、
というところから "鉄砲"。
そこに命名の由来があります。
暁斎の絵には、
「ふぐハ喰いたし
命はおしい」と…
《蝦蟇河豚》 伊藤若冲
ガマガエルのお蔭で、
すっかり毒も吐いたのか…
1643年刊の『料理物語』の
ふぐ汁の作り方…が
「皮をはぎ わたをすて
かしらにある
かくしぎもをよくとりて
血のけなきほど よく洗ひ」
《龍の都三番續》柳川重信
フグを頭にのせた美女と、
クラゲ?いや蛸??
さかなクン?
いや…さかなチャンか。
『箱入娘面屋人魚』 山東京伝
頭に被り物の魚はここにも、
竜宮城の魚たちを
擬人化したものなのです。。
《芳流閣・ふぐ・仙人》
国芳・広重・三代豊国
張交絵と呼ばれるもので、
これは異なる絵師の作品を
配したパターンです。
剣に乗って浪を走る仙人…
鬼瓦の陰に激闘のあとの姿…
なぜここに広重の
「河豚と根深」が
合わされたのか謎です。
《五十三次の内 品川》
三代 歌川豊国 1850年
中央に李下斎紀文実…
由良之助とあります。
『忠臣蔵五十三紀』という
芝居の一場面なのです。
俎で河豚をさばくのは、
肴屋吉五郎。
なぜ品川宿でフグ???
江戸期もフグの名産地は、
長門国の下関でした…
江戸初期の『本朝食鑑』には、
「1尺以上もある大きいものが
芝浜・品川でとれて
品川ふぐというが、
味がよくないので食べない」。
トラフグは超高級品でしたが、
死ぬのは怖い( TДT)
『落葉集』より武具之図
武具とフグと掛ける趣向、
兜の下の石垣は御台場で
ペリー来航の御固(おかため)、
3つの家紋がみえ、
越藩 松平家、長州藩 毛利家、
そして熊本藩 細川家。
「すえ台に武具の
焼もの 手料理を
食わずに帰る 御代の恵を」
《龍宮遊さかなげいづくし》
歌川国芳
ふてぶてしい姿で
描かれることが多いようで、
江戸期は不気味な存在でした。
「飲み仲間 一人死んだで
酔がさめ」
「片棒をかつぐ ゆふべの
ふぐ仲間」
こんな川柳が残ります。
《魚の心》歌川国芳
「魚心あれば水心」
魚に水を思う心があれば、
水もその気持ちを汲み取る
であろうの意ですが…
国芳が魚心を探ると、