京都モダン建築祭2022 京都府庁 正庁のある庁舎


"正庁" 字引くと…
おもてむきの座敷、正殿
庁舎に"正庁の間"があるのは、
戦前の庁舎が使われているのに
限られています。

大阪府庁神奈川県庁
福島県庁、群馬県庁山梨県庁
和歌山県庁、愛媛県庁、高知県庁…
そして京都府庁に"正庁"の間
存続されています。

こちら大阪府庁の"正庁の間"
正庁は"正面の大広間"、
正面最上階にあることが多く、
叙勲や伝達式、辞令交付、
戦前は昭和天皇の写真などを
祭っていた"奉安殿"
がある部屋を、
自治体庁舎に設けられたもの。

行幸の御在所としても使われたが、
戦後は執務室として
使われるなどすることが多く、
劣化が進んでいたり、
"聖殿"イメージが損なわれている
ケースが目立ちます。

京都府庁旧本館は、
1904年(明治37)に
文部技師 久留正道の指導の下、
京都府技師 松室重光
設計を担当し竣工しました。

煉瓦造2階建、一部地下室付で、
小屋組は木造トラス、
屋根は天然スレート葺

平面は中庭をもつロ字形で、
正面に車寄、背面にも車寄があり、
"議事堂"だ突出する構成です。
「京都府庁旧本館は、
 明治中期における
 日本人建築家による
 本格的西洋建築であり、
 西洋建築様式習得の
 ひとつの到達点を示す

 作品として重要である。」
文化財オンラインには、
こう解説されています。

正庁のある旧知事室は、
普段からも公開されています。

"マンサード"という屋根の中央、
採光用の窓 "ドーマー"、
三角形の破風 "ペジュメント"
建築百科事典のようなファサード、
ここだけでも講釈がつきますが…

バルコニーのある車寄せ
内側は円柱、外側は角柱
入りやすい感じがするのが円柱…

両端インサイドは円柱が来るよう
視覚的に配慮され設計されています。

人類初の有人宇宙飛行を成功させた
ガガーリンが来日時に府庁訪問、
バルコニーから府民歓迎に応えたのは、
正庁の間のバルコニーからだそうです。

中に立ち入ると大理石の階段
中庭から陽射しが降り注ぎます。

上部のアーチのセンターをはじめ、
アカンサスの装飾をいくつも
みつけることができます。



玄関近くの受付にもペディメント
上部に上がっています。

「わろてんか」や「坂の上の雲」でも
登場した大理石の階段は、
神殿を思わせます。



踊り場から反対側を振り返ると、
2階にも装飾が付いた角柱。
二階の廊下は赤絨毯敷

"正庁"はシンボルとなる部屋、
和風建築のなかで格式の高い
"折上小組格天井"で仕上がられ、
広がりのある室内の雰囲気が
作り出されています。
木工工事の多くを宮大工であった
三上吉兵衛が担当したのだとか。

天井の装飾にもアカンサス、
そして通気孔を設えています。

室内のペディメント
風格を感じさせます。



正庁内の天井には漆喰装飾
漆喰を盛り上げ形を作った
アカンサスにメダリオン
左官職人の技の発揮どころです。

庁内に内務省臨時事務所
おかれていたことがありました。
大正天皇の即位の礼(1915年11月)、
昭和天皇の即位の礼(1928年11月)では、
閣議がここで開催されました。



知事室の暖炉は、
食堂の暖炉の裏側にあり、
排気効率が考えられた配置。
暖炉は旧館に4つあり、
それぞれ意匠が違うのです。

大理石にタイルの組み合わせ、
上部に大きな鏡が取り付けられ、
知事室に威厳を持たせています。

こちら食堂側の暖炉
木枠にタイルが使われています。

京都府庁・旧本館の装飾の
モチーフとして使用されている
植物は「アカンサス」。

アカンサスはギリシア国花でもあり、
花言葉は
「芸術・巧みさ・離れない結び目」…
離れない結び目は、
結婚の意にも通じます。。

壁面に取り付けられた
"知事・部長登退庁表示灯"は、
1928年に設置されたもの…
呼び出せれた相手はボタンを
押して応えたとか、
設置し続けている官庁や大学は、
いまでも多く見られるものです。
職場でも Outlookの予定表に入力、
なのに出退勤ホワイトボードに…
二度手間になってますわ(T_T)

旧食堂と使われていた
天井回りの装飾は、
すこし抑えめです

和文タイプライター

計算機???
展示コレクションなのかどうか…

"まゆまろ"が居たり

なんか不思議空間でもありました…

WOOD友禅 "春の京都府庁"
杉板に京友禅染…
江戸時代の手法を再現した、
糸目友禅の第一人者 
橋村重彦さんの作品です。

京都府庁旧館には桜が映えるとか…
次回は"府庁の桜たち"を紹介します。

★ 京都モダン建築祭 公開データ ★
京都府庁旧本館
公開日時 : 11月11日(金)-13日(日)
       11月11日 10:00〜17:00
       11月12日-13日 13:00〜16:00
公開エリア: 旧議場、旧知事室、中庭
竣工年  : 1904年(明治37)
構造・規模: 煉瓦造一部石造、
       正面および背面に車寄せ付
       地上2階、一部地下
設計   : 松室重光、久留正道、一井九平
施工   : 三上吉兵衛
作庭   : 七代目小川治兵衛
所在地  : 京都市上京区
                    下立売通新町西入薮ノ内町
[重要文化財]

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