京都モダン建築祭2022 都ホテル京都:階段の村野藤吾


関西大学の村野藤吾を紹介するHP
"タイルと階段に注目"のページ。
「薄いスラブ(床)の階段と、
 社交ダンスのしなやかな
 腕の振りを連想させる
 木製手すりのなめらかさに
 村野らしさが光っています。」
とあります。

"京都モダン建築祭"の
都ホテル京都の特別公開、
もうひとつの目玉は"本館旧階段"
ふだんは従業員専用階段とかで、
今回の公開でスタッフから、
値打ちがあるもとは知らず…と
ちょっとキレイにしないと、
って大掃除されたそうです。

"京都都ホテル"の木製手摺、
そして落下防止のパネル

そして手摺…
素材をどう曲げるか?
村野の執着心が宿っています。

村野はその設計手法を
みずからこう述べていたとか…
「私は かど があるのが
 きらい
なんです。
 私はもうどれでも
 みんな かど を取ってるんです。
 それで丸くする癖がありますね。
 そうしないとどうもなにか
 手ざわりが悪いような、
 それから心持ちが
 しっくりしないんです。
」。

建築史家の長谷川堯さんの
動線の美学』※1での解説…
村野の階段デザインは
1950年代は変化に富み、
特異な創意にあふれた時期とか。
1960年代は平穏安定の表情、
独自デザインの洗練と完成へ…

手摺の形態はコダワリがあり、
東京の日生劇場のロビー大階段
手で握る細いレール部分が
ダブルになっている
そうです。
アーチの連続形に似た
側面を見せる手摺が
階段の上昇につれて
そのアーチが繰り返す。
村野さんの説明はこうとか…
頑丈なやつはいかん、
 礼儀的に紳士が貴婦人に
 ちょっと手を差しのばす、
 あの感じ
」艶っぽい話です。

型を決めるとき
「図面より土を」
とも…
村野さんは土を愛した人で、
設計過程でスケッチや油土を
使っていた
ことから、
柔らかな曲線が志向されたのです。
そして…
村野さんは自分が知らないものとか、
新しいものとかを否定しようと
したことは一度もなかった
そうです。

広島にある世界平和記念聖堂の目地、
職人たちに「荒っぽく善い仕事」?
そんな要求をしていました。
コンクリートレンガとともに、
 "ラフ" なツクリです。
表面の陰影が建物に
やわらかいイメージを与えている。
村野自身はこれを"日本的表現"と
述べているのだそうです。
でも構造的に確りさせるには、
建物には"しなやかさ"が必要だ


京都都ホテルのもうひとつの
"村野の階段"はロビーから
西館にある宴会場へ誘う

金属という素材であっても、
滑らかな曲線美への追求は、
極めて貪欲なフォルムを
みせています。

階段デザインは村野藤吾の
設計手法につながる
との主張は、
明治大学の 米沢慶介さん。
「形態」、「素材」、「装飾」
 それぞれについて階段を見ていると
 村野藤吾の設計する作品には
 随所に設計手法には類似点がある。」
流麗な曲線と軽快なシルエットの"形態"
"素材"は時代に沿ったものを使いう、
人との関係を繋ぐ"装飾"へ

村野藤吾という建築家が"階段づくり"に
情熱を傾けたのはナゼか?
階段を昇降という
 単純な肉体的動作を通して、
 人の体を建築そのものの中へと
 浸透させ、それと同化
し、
 それを身体化することを
 契機として、重要なものだと
 村野が考えていたから」…

ちょっと話が堅苦しくなりました。
人の手や身体の痕跡を残したいとの、
村野の建築美学への目論みだという。

バレンタインデーの時期になると、
都ホテル京都の"らせん階段"が
一際注目を浴びるようになったとか。
1988年の西館完成から
30年たった2018年のこと、
ウエディングの撮影スポットを
探していたスタッフが気づいた


下から見上げるとハートに見える
♡ らせん階段 ♡
は、
見上げる角度で形が変わるそうで、
そう愛のカタチはさまざまですから😆
縁結びのご利益はあったのかどうか、
ホンマに知らんけど♡(•ө•)♡


※1『動線の美学―階段・手摺・通路』
   2000年5月 和風建築社 編
       建築資料研究社 刊

※このブログは米沢慶介さんのレポート
 「村野藤吾の建築における階段とその思想
  ―形態・素材・装飾に着目して―」

            を大いに参考にしました。

★ 京都モダン建築祭 公開データ ★
ウェスティン都ホテル京都
公開日時 : 11月11日(金)のみ
公開エリア: 村野スイート、本館旧階段など
竣工年  : 1960年(昭和35)
構造・規模: 鉄骨鉄筋コンクリート造・
       地上8階、地下1階
設計   : 村野・森建築事務所
施工   : 大林組
所在地  : 京都市東山区粟田口華頂町1

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