Randy Bass バース本塁打傑作選 VOL.3

Randy Bass バース本塁打傑作選 VOL.3


1985年10月26日
 対西武 第1戦

戒厳令の
 
アウトコース











シリーズを前に、広岡達朗は
「石毛と真弓の活躍が今シリーズのカギを握る」
  と睨む傍ら、バース攻略法を練った。

「バースを封じれば、阪神は止まる。」
それは周囲を含めた一致した意見でもあった。
厳しく躾けられたライオンが三冠王の
怪物をどう封じ込めるか?
シリーズ最大の焦点は曇天の西武球場での
開幕第一戦で早くもスポットがあてられた。

両軍無得点で向かえた八回表、先頭真弓が二塁打。
次打者は隔年制採用のDHにはいった弘田。
猛打が看板の阪神もここは定石通りバントのサイン。
西武内野陣も送りバントを決めこみ、
シフトを敷くとともに、二塁へ再三の牽制球。
その極端な守備体型に
吉田監督のサインは「打て」にかわった。
「素直にやらせればよかった」と
      しきりに悔やんだ広岡。
「おあつらえ向き」の外角球にバットを合わせ、
前進守備の一二塁間を破った弘田。
無死、一三塁でバース登場。

投手戦の狭間で揺れていた勝利の女神は、
徐々に阪神の方へ微笑みかけ始めた。

一方、広岡もこの場面、予定通りを展開。
「内を突いた後、
  ボールになる外側の球で勝負」策を
授けられた秘蔵っ子・工藤が、
早々とカクテル光線に
照らされていたマウンドに登った。

第一球直球ストライク見送り、
第二球もまっすぐだったがボール。
三球目のカーブも外れた。
ここまで外、内、外と交互に来る。
そして四球目、インコースの直球を
バースは豪快なスイングで空振りした。
データ通りの展開に捕手の伊東は内心ほくそ笑み、
五球目のサインをかわす。
「アウトコース、カーブ」
だがそれは伊東のリードである一方、
バースのシナリオでもあった。

右足を思い切り踏み込んで、
外角ギリギリの球を真ん中の絶好球へ。
「外野フライでもいいと思った」
バースの太く、長い腕が工藤の勝負球をとらえた。

試合後、
「打たれたんだから甘い球だったんでしょう」
 と工藤がうなだれれば。
広岡も「打つべき人が大きいのを打ったということ」と
 淡々とした敗戦の弁。

背走したレフトの金森がフェンスに激突して、
はじかれるように倒れるのと、
黄色のメガホンで埋まった芝生席が
沸きかえるコントラストは、
そのまま試合の明と暗をくっきりと浮かびあがらせた。



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