近代美術と裸婦像
小出楢重
「卓上静物
(西瓜のある静物)」
1928年
小出楢重の随筆に
「洋画ではなぜ裸体画をかくか」
というのがあるそうです。
少し長いですが・・・
「 私の考へでは、
お互い同士の人間の相貌の美しさを
知るこ事が出来、
強く執着するが故に
その美を現さうとする心も従って強く、
その表現も簡単な事ではすまされないのです、
慾の上に慾が重なり、あ ゝでも無い、
かうでもない処の、
複雑極まりなき表現慾が積り、
何枚でも描いて見度くなるのであります・ 」
「 其他に、画家の勉強の方法として、
これは西洋画に限って裸体を書きます。
それはデッサンや油絵の習作の為めには裸体が、
毎日々々の練習には最も適当であり
便利である為めでせう。
それは複雑極まりなき立体感やその剛軟、
微妙な色調とデリケートな凸凹と明暗の調子、
そして決してごまかし得ない処の人体の形の構成を
ことごとく表現し描き出す事は、
最も困難な仕事とされてゐます。
従つて裸体習作の困難は、
写実を常に本領とする処の
油絵の基礎工事であります。
それは画学生から一生涯つき纏う処の
基礎工事であり難工事でありませう。」
実は小出楢重という画家は、
「裸婦の楢重」、「楢重の裸婦」といわれ、
わずか十数年の短い創作活動でしたが、
数多くの優れた 裸婦像 を残しています。
ところで、
裸婦像といえば
最近よくテレビで
目にするのが、
モディリアーニの
「髪をほどいた横たわる裸婦」。
大阪市の市政100周年記念事業として、
1983年に建設計画が出された
「大阪市立近代美術館」のシンボルと
なりうる一枚でもあります。
ただ「大阪市立近代美術館」の
コレクションは
約4200点にのぼりますが、
未だ実現をみていません。
1998年には約280億円の事業費をつぎ込み、
中之島の大阪大医 学部跡地を国から取得。
2004年に「国立国際美術館」が
予定地付近に移転され
一大文化ゾーンの機運が
高まっていたが・・・
ただ。。2012年3月末までに
建設完了が用地購入の条件で、
このまま放置されると最大で
約48億円の違約金を支払いの
可能性もあるんだそうです。
事業家・山本發次郎(はつじろう)からの、
大阪出身の洋画家、佐伯祐三の作品などの
約600点の寄贈がきっかけとなった美術館構想。
多くは寄贈というが、
モディリアーニの
「髪をほどいた横たわる裸婦」は19億3千万円、
ダリの「幽霊と幻影」には
6億7800万円がつぎ込まれていることは、
あまり知られてはいなかったと思います。
実は虎次郎の職場にも
大阪出身の画家やゆかりのある人物の
洋画が数点かざられており、
小出楢重の作品もあります。
ただ、、洋画に裸婦像はつきものといえども、、
なかなか飾るのはままならない。
大きい作品となるとなおさらのことです。
実はモディリアーニは生涯一回だけ
個展をしたことがあるそうです。
「髪をほどいた横たわる裸婦」も
並んだのですが、警察は風紀を乱すとして
この絵の撤去を命じたそうです。
虎次郎は日本美術史というのを大学時代にかじりましたが、
西洋美術についてはほとんど知識がありません。
なるべくいろんなものを
見ようとこの年になって思うようになりました。
ただ・・・
モディリアーニの裸婦が
テレビのニュースで映るたびに、
「これを見せるのにさらなる出費、
みんな納得するかな?」とも思います。。。
悩ましいかぎりである。
絵は見て感じるためのもの。。
ただ「近代美術」という科目の
大阪市の授業料は、
すこし高くついてしまったようですね。
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