大津絵の伝承者たち⑥ 歌川国芳


《流行逢都絵希代稀物》
 1850頃 歌川国芳

店の描き置き作品から
抜け出した大津絵の精が
敵方を追い払う
傾城反魂香』の場面。
顔の隠れた絵師は、
うちわの芳桐紋から
国芳 自身とわかる嗜好。

傾城反魂香』は、
画才に恵まれた絵師 狩野元信と、
死を迎える遊女遠山との
身分を越えた悲恋物語である。
新春の文楽はこちらが演目に
なっています…
途中の挿話に、
大津絵師である浮世又平
エピソードが語られる…

《浮世又平名画奇特》
歌川国芳
 1853年 個人蔵

大津絵と近松の浄瑠璃作品が、
「モノ」としての知名度向上に
一役買っていたのです。

この浮世絵大いに売れたのだが、
その後…
販売停止、版木、手持ち品没収の
憂き目を受けました。
鷹匠の羽織に「かん」とあり
疳公方と揶揄された
将軍 家元を風刺したとの、
噂のためとか…

《浮世又平・鬼の念仏》鈴木松年

又平が描いた大津絵から、
鬼や弁慶たちが抜け出す
モチーフはその後もよく
描かれました。
鈴木松年(1848~1918)は、

はじめの号は百僊、
鈴木百年の長男として生まれ、
上村松園の最初の師としても
知られています。
江戸時代に活躍した
画家 曽我蕭白の再来とも…

《程芳流行大津絵 宮本無三四》
 歌川国芳

国芳が当世流行の役者と
コマ絵の大津絵が重ねて
描かいたシリーズがあります。
なぜ…宮本武蔵鬼の行水
史料に基づいた話なのだが、
武蔵は足を洗ったり
行水をすることは嫌い

ましてや沐浴など
あり得なかったとか。

《程芳流行大津絵 清水冠者義高》
 歌川国芳


清水義高ネズミ
曲亭馬琴が著した
頼豪阿闍梨恠鼠伝
義高は木曾義仲の遺児、
義高はネズミの妖術の
覚えがあったとか…
座頭の犬に因んだもの。

《程芳流行大津絵 鎌田又八》
 歌川国芳


『頼豪阿闍梨恠鼠伝』は
三井寺由縁の物語ですが、
釣鐘弁慶と収まる鎌田又八
草双紙に登場する又八は、
剛力無双で敵討ちなどに活躍。
歌舞伎、浄瑠璃では、
梅鎌田大力巷説」。


国芳が役者絵として
描くと…こんな感じ。

最後に国芳の福禄寿を二点。

「福禄寿あたまのたわむれ」…

《程芳流行大津絵 千鳥 切石丹下》

福禄寿さんってやっぱり、
いじられキャラなんですね。

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