建築史探偵団・京都2 新風館
建築史探偵団・京都 2回目は、
「新風館」と看板が掲げられる商業施設への
リノベーション物件となった「京都中央電話局」。
烏丸御池の交差点の角には、
どこにでもあるガラス張りビルが出で立つ。
東南角もこんな感じ...
御池通より「一本下」(いっぽんしも)に、
「姉小路通」でその東南角に今なお残る
ドッシリとした重厚感のある建物が...
姉小路通に面する部分にはせり出し部分が...
おそらくこちらがエントランスだったのかと。
西面北面ともに連続したアーチ。
設計は逓信省技師の吉田哲郎さんで、
当初逓信省の京都中央電話局として建設された。
モダニズム建築の傑作と呼ばれているらしく、
堅牢さの中にもさりげなく施された装飾。
こちらはタイルが網代風に貼られている。
別の面は市松模様になっておる。
タイル張りの技術の高さを示す“天張り”は、
落下はしないという自信の表れです。
エントランス内にはアーチが織りなすドーム。
吉田哲郎さんは、当時ドイツで流行していた
表現主義の建築に深く傾倒していたそうで、
ドイツ的影響を受けたという評価が一般的。
ただ京都というお土地柄もあってか
日本古来の工芸品のような趣きを感じさせます。
所有者のNTTグループのデザイン性が、
烏丸通りに面するの立地の良さから、
10年間の暫定使用として建てられた
商業施設へのリノベーション物件。
鉄骨造にALC(軽量気泡コンクリート)パネル
という安価な材料でシンプルなデザイン。
安易に古いものに迎合していないのが、
ペンキ色彩とかエスカレーターとか、
堅牢な外観との対比で
よりええの味を出していると思います。
「新風館」には実は核店舗はなく、
料理教室とかも入っているから...
あまり店の入れ替えもないようにも見えます。
雑然とした店舗構成がいろんな人たちを迎え入れ、
そのことが短絡的に売り上げだけを求めずに、
モールそのものの滞留時間を長くさせ、
余分な空間を工夫しようとする仕掛けがあります。
商業施設の動向をひょっとしたら、
先取りしていていたのかも知れませんね。
「京都中央電話局」
→「京都電電ビル西館」→「新風館」
建築年:1926年(大正15)
設計:吉田鉄郎(逓信省)
施工:清水組
構造:RC造3階建
所在地:京都市中京区烏丸通姉小路下ル
【市登録有形文化財】