日本人の嗜好をさぐる⑱ きゅうり


『本草図譜』より胡瓜

「祇園会や 胡瓜花さく 所まで」
元禄期の俳人 清水超波の句。

《祇園祭礼図屏風》部分 寛永期

祇園社の神紋・瓜の紋が
胡瓜のさなごの形と、
類似しているとも…
牛頭天王への供物として、
初なりの胡瓜は川へ流したとか。
取って食おうと天王を
追いかけてきた鬼が、
胡瓜の蔓に足を取られて転倒。
祇園の神と胡瓜との関わりは、
数多く残ります。



『和漢三才図会』には、
「祇園神、胡瓜の社地に
 入る事を禁ず。産土の人、
 これを食ふ事を忌む」
とあり、
昔の京都では胡瓜を食べる人が
少なかったようで…
祇園祭の行列も胡瓜畑の
手前で止まるのが
しきたりだったようです。

《江戸名所道化尽
 廿四 数寄屋かし》
 歌川広景


胡瓜が好物といえば河童
祇園神も大好物でしたが、
夢で目を傷められたから、
仇の胡瓜は食べませんと、
忌み嫌っているとも。

《河童と胡瓜》北雅

京都には土用の丑の日に
「きゅうり封じ」を執り行う
お寺があります。
真言宗開祖・空海の「秘法」
胡瓜にパワーを帯びさせ、
参拝者は体の悪いとこを撫でる。
撫でた胡瓜は土に埋めて
病気平癒を願うというもの。

《茄子と胡瓜》児玉徹

きゅうりは水分が多くて
腐りやすく早く自然に帰る。

そんな特性を知っての
ことだろうか…

《きゅうり》児玉徹

胡瓜は夏バテに
効果があるとされます。
今が旬をあえて封じることで、
疫病退散を祈願し、
祇園祭が無事を願うともの。
好きなものを一定期間、
断つことで願いを叶えてもらう
願掛けの「断ち物」なのでしょう。

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