日本人の嗜好をさぐる㉕ 風鈴
《縞揃女弁慶 三井寺の鐘》
歌川国芳
風鈴というコトバ。
浄土宗の開祖・法然上人が
初めて使ったとされています。
もとは竹林に吊り下げて置き、
音の鳴り方によって
物事の吉兆を占ったとか。
「占風鐸(せんぷうたく)」
と呼ぶものが、
仏教とともに日本へ…
寺院の屋根に吊るされる
「風鐸」となりました。
《美人風鈴》 栄松斎長喜
魔除けの意味があり、
その音の聞こえる範囲に
住む人々には
災いが起こらないと
信じられていました。
その後 平安貴族の間で、
厄除けとして風鐸を
屋敷の屋根に吊るし、
広がっていったのです。
《風鈴》宮﨑優 2017年
ところで…風鈴の音、
心なしか涼しくなった
というメカニズム??
情緒がそう感じさせるの
だろうと思いきや、
風鈴の音を聞くと、
本当に体の表面の温度が
2~3℃下がるとか…
風鈴の音
→ 風が吹いた
→ 涼しい
と脳が勝手に判断し、
「ということは、
体温が下がるぞ」と
末梢神経に命令を!。
日本人限定で、
風鈴の音と涼しさが
結びつかない外国人には、
現象として起こりません。
『俳諧東土産』より硝子師
風鈴にはいろんな
種類がありますが、
江戸時代に作られ始めたのが
ガラス製の風鈴です。1700年ごろ、
長崎のガラス職人が見せ物として
各地に広めて行ったのが
はじまりされています。
ただ、かなり高額なもので、
ひとつ今の貨幣価値だと
200万円~300万円ほど…
吊るすことも鳴らすことも、
庶民には敷居が高すぎました。
川崎大師の風鈴市より
ガラス製の風鈴の涼やかな音色は、
いまなお日本の夏を彩っています。
硝子風鈴の音色には、
"ゆらぎ効果"というものがあって、
" 1/fゆらぎ "と呼ばれる
一定のリズムが奏でられ、
心を癒すと言われています。
ガラスが冷えたら開口部を
刃物で切り落とすのですが、
切り口はあえて ギザギザ に。
滑らかに仕上げると、
音の出ない風鈴になって
しまうからだそうです。
《吾妻源氏 放生会乃図》
歌川豊国
江戸風鈴と並んで有名なのが、
岩手県の工芸品 南部鉄器 で
作られる南部風鈴ですね。
良質な砂鉄を含んだ、
密度の高い鋳物の風鈴は、
「チリン、チリン」ではなく、
「チーン」と高く澄んだ音が
響き渡ります。
『忠臣蔵前世幕無』より
こちらは"夜鷹そば" より
ちょっと上ランクの
「風鈴蕎麦」という
屋台蕎麦というもの、
屋台に風鈴を下げて
風鈴の音でお客を
呼び込んだそうです。
「売り声も なくて買い手の
数あるは 音に知らるる
風鈴の徳」
江戸時代の末期、風鈴売りは
天秤に沢山の風鈴をぶら下げ、
江戸八百八町を売り歩いたが、
売り声をあげることは
ありませんでした…
こちら南部鉄器風鈴の
"アマビエ" さま。
岩手県奥州市にある
及富さんの自慢の逸品…
HPにYoutubeがありました。
いい響き…
楽しんでみてください。