大阪の近代化遺産をあるく〜大阪市立工芸高校


阿倍野区役所にほど近くに立つ
市立工芸高校」は、
大正末期から昭和初期の
新しい教育運動が活況のなか、
建てられました。

公立の高等学校だが、
デザイン・造形を総合的に
学ぶ若者たちが集います。

日本では極めて珍しい
ユーゲント・シュティール
という近代建築だとか。
ユーゲント・シュティールとは、
別名「青年様式」といい、
19世紀末から20世紀初頭に
ドイツで流行したスタイル。

デザインの特徴は勾配屋根の棟、
そしてシンボルの時計台を戴く。

マンサード風の鎧の袖のような
屋根の垂れ下がりがオモシロイ。





亀甲紋アカンサスの葉の見切り。





外壁は化粧積みした煉瓦。

玄関はこれぞ本館という、
重厚感ある堂々としています。

校舎を道路に近づけ、
前庭を最小限に玄関を配置するのは、
「学問、特に実業学校においては
 現実の社会と密接な
 連携を保つべき」
とも意図されたとも…

デザインの原型となったのは、
ドイツ、ワイマールの工芸学校とも。
設計は大阪市営繕課によるものだが、
その中心人物は矢木英夫さんとか…
なぜ大阪市営繕課が、
遠く離れたワイマール工芸学校を
参考にすることが出来たのか?

「ただ現地へ行かずとも
 留学経験者などの人脈を
 通して情報を得ていた」と
京都造形芸大の戸柱美智代さんは、
こう推測されておられます。

いずれにしても、

新しいデザイン教育の中心、
ワイマールの工芸学校を手本にし、
新しい時代の造形教育をめざした
心意気がいまに伝わります。

教室部分は窓と外壁を立ち上げ、
屋根を区切られています。

屋根の曲線がより強調され、
外観全体がオンリーワンの
フォルムを醸し出しています。

1994~1996年にかけて、
耐震壁の増設をはじめとし、
建物の改修工事が行われました。

「大阪市立工芸学校」
 (現 大阪市立工芸高等学校
竣工年:1924年(大正13)
設計 :大阪市営繕課/矢木英夫
構造 :鉄筋コンクリート3階建、小屋組は鉄骨組み
所在地:大阪市阿倍野区文の里1−7−2

ユーゲント・シュティール
アール・ヌーヴォーのドイツでの呼称。
ベルギー=フランスにおけるアール・ヌーボーの
曲線美とヴィーン・ゼツェッシオン(分離派)の
幾何学的な直線美が融合していると解説される。

※このブログは以下研究レポートを参考にしました。
大阪市立工芸高等学校本館の
 外観デザインにおける考察
 戸柱美智代, 2011年

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