瀬戸田をあるく~向上寺
瀬戸田水道を見下ろす
潮音山(ちょうおんざん)に建つ
国宝 三重塔。
町の北鬼門の鎮護として立つ、
本尊の聖観世音菩薩は、
町の災いを防除して、
興隆繁栄の祈願寺として
崇敬される向上寺。
西日本豪雨の影響もあって、
倒木やがけ崩れなどで、
別ルートは塞がれていました。
案内地蔵に導かれます。
しおまち商店街を通って、
登山道を徒歩で片道約20分ほど。
振り返ると謎の白い巨塔??
創建は応永10年(1403年)、
生口島を統治していた
生口守平(いくちもりひら)開基、
三原の仏通寺(ぶっつうじ)を
開いた仏徳大通禅師こと
愚中周及の開山。
向上庵を起源。
当時は仏通寺と同じ臨済宗…
その後に一時衰退し、
慶長期に阿伏兎観音の
盤台寺の僧侶 関的にて再興、
その際に曹洞宗へと改められた。
生口氏は平家の流れを汲むが、
源平合戦において源方に尽力、
安芸国沼田荘の地頭に。
生口島は瀬戸内海航路の要衝、
生口氏は交易により繁栄を遂げ、
室町幕府に正式に生口島の
地頭職を認められていました。
国宝の三重塔の中では
1432年(永亨4年)の建立、
最も新しいものです。
拝観料100円をポストに入れ…
さらに石段をあがると…
朱で塗られた部材に、
白壁や極彩色の彫刻が映える
三重塔が青空に聳え立つ。
三重塔が青空に聳え立つ。
軒を支える三手先の組物から
突き出た尾垂木(おだるき)下の
肘木鼻(ひじきばな)。
植物の葉をあしらった若葉の
彫刻には力強さを感じさせます。
右下の組物間の中備(なかぞえ)には、
蓮の花弁のような蓑束(みのづか)は、
厳島神社の五重塔にもある意匠。
扉の軸を受ける藁座(わらざ)にも
蓮の葉の彫刻が施されています。
実は他に例が無いそうで、
向上寺 唯一無二のものとか。
国宝指定の三重塔の中では最小。
連子窓の代わりに花頭窓…
鎌倉時代に禅宗と共に
宋より日本に伝わった建築様式。
禅宗様を大胆に取り入れた、
折衷様であることが
国宝たる所以なのです。
1973年の解体修理時に、
使用部材の大部分が
建立当時のものと確認。
1982年には彩色の塗り替え、
往時の輝きが蘇ったそうです。
内部はほぼ和様の構造だそうで、
初重には大日如来が安置され、
内陣も極彩色装飾に壁画…
ただ劣化や剥落が著しく、
絵柄が不明な部分もあってか、
復元はなされていないそうです。
「せとうちの しおのながれに たどりつき
おじひをといて みなをすくわん」