京の冬の旅2023+ 洛西の古刹 等持院 へ


洛西の古刹 等持院
ただ洛中に等持寺がある。
院と寺が京都に2つ、
足利尊氏が夢窓国師 開基の
等持寺を1339(暦応2)年に、
後醍醐天皇が吉野で崩じて、
その年に暦応寺が創立。
「足利氏の立場から」
尊氏が元弘以来の戦没冥福
資するために建てたのが、
衣笠山麓に"等持寺の別院"。

義詮の追悼記に「仁和寺の等持院」、
仁和寺の塔頭か子院の一つだったとか。
疎石を開山とする禅院に改め
衣笠山麓の方を北等持寺か北寺、
洛中のを南寺、南等持寺と称した。
尊氏が薨ずると法号にちなんで、
北寺は等持院と呼び改められた。

庫裏の玄関に入る表門には、
名称庭園 史跡木像 等持院とある。
薬医門という形式で、
1808(文化5)年の火災後の再建。

境内伽藍からかなり離れた山門
室町期は広大な寺域を誇っていた。
相國寺、等持寺、そして等持院は、
幕府から特別視
されていて、
室町の禅は権力・体制と密着。
"不立文字"の禅僧が
計数に明るかったのは、
厖大な寺領を誇っていた所以


禅宗寺院方丈では庭園前は唐門だが、
等持院のは"唐門"と称すものの、
唐破風はなく切妻造、桟瓦葺

正面妻飾に三重虹梁蟇股式、
大瓶束を組みあわせた"庫裏”、
1808(文化5)年の火災後に再建。

棟に煙出しの櫓を載せる。

安土桃山・江戸初期の武将、
福島正則によって創建の
妙心寺塔頭 海福院の客殿として、
1616(元和2)年に建てられた方丈。

方丈南側の石庭は、
天龍寺管長で等持院住職でもあった
関牧翁老師によって整備されたもの。

初夏の風景は絵葉書より。

方丈の仏間には定印を結ぶ
釈迦如来坐像が臨まれる。
後世の漆箔で厚く
覆われているものの、
平安様式を伝えます。

"大聖歓喜天像"
もとは境内の池の中島にあった
聖天堂に祀られていたもので、
1934年の室戸台風で倒壊、
方丈に移されたもの。
夢窓国師像とともに…

現在の等持院庭園は
大きく二つに分かれる。
人によって呼び名は異なるが、
東の心字池(しんじいけ)中心の庭園と
西の芙蓉池(ふようち)を中心をするもの。
庭園関係者のあいだでは、
東の心字池は夢窓国師が造った
池の面影が残されている
とか…

三つの島をもつ池を中心とした
自然風の庭園の一番大きな
東の島には妙音閣があったとか…
重森三玲の戦前の測量記録には、
存在していたようで…
戦後1950年のジェーン台風で倒壊
礎石を残しているとか。

尊氏側近の高師直が1342(康永元)、
夢窓国師に乞うて開いた寺域とか。

『太平記』によると…
高師直はやりたい放題で造園…
ぜいたくな庭造り
との記事。

ただ南朝側の『太平記』には、
高師直の行状が誇張されていて、
慇懃無礼に描写されているのは、
歴史書の記述においても、
しばしばあること…


もし師直が名木、名石を集めて
豪奢な庭園を造っていたとしても、
いつかの時点で持ちされたのは必須、
枯淡な庭園こそが淡々と伝えます

衣笠山を背景に躑躅を始めとし、
四季の装花が芙蓉池を囲む。

芙蓉池を挟んで小高い丘に"清漣亭"、
水上勉の『草木の声』を引く…
「…足利八代将軍 義政が愛したと
 伝えられる「清漣亭」と
 名づける茅ぶき茶室があって、
 茶室前の苔むした
 石段を降りてきて、
 右に小高い土盛りがみえる。…」
寺伝によると義政が復興した
1458(長禄2)年のものは、
銀閣 東求堂より30年前…
現存は江戸中期整備の
頃の様式を伝えています。
 
上段一畳を貴人床とする
二畳台目の席で、
上段一畳に坐して望む
芙蓉池苑はまた格別とか…
芙蓉池に風あるやなし 落花舞ふ
赤松柳史の高弟 青山柳為の句

わびすけ椿樹齢三百余年

芙蓉池に落つる花は椿なのか…
水上勉にも大切な花、
「凍てた小僧時代の生活に、
 ぬくもりを感じないでは
 おれない」
と記している。

池畔に背の高い宝篋印塔
尊氏の墓とされていて、
院号を等持院という。
石川淳の小説『修羅』
一休宗純と師と慕う武士との、
語り始めはこんな風に始まる
「源氏の棟梁として、
 その位にそなはつたのは、
 おもへば等持院殿までであつたな。」


司馬遼太郎も尊氏を心に留めていた、
そんな作家はこう綴っています。
「異霊、妖怪、怨霊、下等の神々の
 存在が信じられていたのは
 室町時代までであろう。
 というより室町時代から
 そういうものへの
 信仰的実在感が薄れ、
 合理主義的精神が擡頭して
 そういうものが夜明けの星のように
 ひとつずつ消え始めた。


次回は心字池西の霊光殿の座す、
足利歴代を綴ります。

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