1970EXPOユニコレ⑮ せんい館のメッセージ


総勢45名のホステスたちを擁した
"せんい館"のユニフォームは、
動くファッションとして
位置づけられていました。

とき・ところ・場合によって、
 色・柄・スタイル・素材が
 多彩に変化す
る”
あらゆる繊維素材たち、
60種類におよんでいたのは、
他の展示館の追随を
許してはならないという、
強い意気込みがありました。

せんい館の展示は四部構成、
映像ドーム、展示回廊、
ロビー人形、空間ディスプレイ。
そして海外の繊維団体参加の
ファッションショーが
演じられていました。

せんい館の共同出展参加社は、
自社製品をPRしたいのは当然、
ユニフォームのタイプは12
参加社すべての素材を使用
その結果として膨れ上がったのです。

何十種類のタイプがある
ユニフォームだが、
基本形となっているのは、
白色のワンピースにベスト
というスタイル。

こちらは復刻版のものですが、
ユニフォーム以外にも、
帽子、手袋、靴、ハンドバッグ、
アクセサリーはもちろん。
なんと下着に至るまで、
出展会社から提供されたのとか。

ベストは万国博の基本カラー、
濃紺色、緑色、赤色をふまえ
バラエティに富んでいたが、
共通させたのは
白色の帽子と白色の靴






ロビーには、
老紳士の人形20体…
人形作家・四谷シモン
フロックコートと山高帽、
ルネ・マグリットのモチーフとか。
山高帽からレーザービームを照射、
内蔵スピーカーから語りかけたり、
レーザー光線で"あやとり"
不気味な存在でしかありません。

マグリットはベルギー生まれの
シュルレアリスムの画家で、
写実的でありながら、
現実離れした幻想的な作風。
何体かはコレクターの手に…
あの「なんでも鑑定団」に、
出展されたこともありました。

「せんい館」のポスターがコレ、
建築を手がけた横尾忠則は、
スロープ状の屋根から
「赤い男根のようなドーム」を
突き出させました。

夜景に赤いせんい館…
上空に世界中の旅客機が飛ぶ、
あの三島由紀夫は、
空襲の夜を想い出す
と評したとか。

このパビリオンを
 芝居の書割(かきわ)りか
 張りぼてのようなものにしたかった

と自伝に綴られた横尾さん。
権力側・体制側に与(くみ)するような、
万博の仕事への後ろめたさ
示していたようです。

ドームは建設途中のように
工事用の足場が組まれたまま。

作業服姿の等身大の人形8体、
開会1日前でも万博のあちこちで、
追い込み工事だったとはいえ…

開会日に近づいても足場丸太は、
取り付けられたままで、
撤去する時間がなく、
あえて人形を取り付けて
ディスプレイをしようと、
急遽のプランだったかどうかは、
今となっては謎のまま。
丸太に止まるカラスも人形です。

看板設置も足場が付いたまま、
足場丸太は工事に使われた
本物の杉やヒノキが、
取り付けた番線(ばんせん)
まで本物でしたので、

横尾さんの企図するところ。

完成へあと一歩の時点の
凍結した状態を表現、
建築の未完成の表現なのです。




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