村野藤吾のファサード⑦ 村野・森建築事務所(大阪市阿倍野区)

「1929年、独立した村野は、
自宅の一部を事務所とするが、
この周辺に多大な土地を有する
泉岡宗助の助力もあり、
北と東に道路を有する
この場所に移転し、
事務所を構える。」※

[模型1/100 京都工芸繊維大学蔵]
村野が渡辺節から
独立すると決心したのは、
商業建築に興味があって、
その依頼主が村野のもとに
集まり始めていたからだそうだ。

近づくと…粗ずりなタイル。
本来目地とタイルは凸凹があるはず、
それが生じないように仕上がり。
タイル面をオーバーするように
塗られた目地は、
「世界平和記念聖堂」にも通じる。

[世界平和記念聖堂のタイル目地]

タイルは「シャモットタイル」
というもので、
きっちり丁寧に作りこみつつ、
見た目は荒っぽくザックリ…
まさに「職人泣かせ」の技法。

玄関門扉

内側からみるとこんな感じ。
白い扉は金属板に切れ目を
入れながら押し上げたもので、
「エキスパンドメタル」。
村野の好んだ表現のひとつ。

こちらは
村野の蔵書が収められていた書庫。
書庫内の階段は幅が狭いが…
村野の私的情報空間と
いえるものなのかもしれません。

北側壁面
千鳥張りされたタイルと
コンクリートの壁のコントラスト。
北東側には窓のバリエーション。

村野事務所が移転して、
個人宅に持ち主が変わって、
その後ミュージアムにしよう!
って話もあったみたいですが…
いまは某事務所になってます。

周辺もどんどん空き地、
コインパーキング…
そしてマンションとなるから、
早いうちに村野資料館なるものに、
なって欲しいなぁ〜なんて。
なくなったら取り戻せないからね。

「村野・森建築事務所」
竣工年:1970年(昭和45)
設計 :村野藤吾
構造 :SRC造・RC造 3階、地下1階
所在地:大阪市阿倍野区阿倍野筋2-3-8