村野藤吾のファサード⑤ フジカワビル(大阪市中央区)


本町通から堺筋を
北浜の方に少し歩く…
堺筋に面するガラスブロックビル
村野藤吾の小規模な
オフィスビルの典型。

世界平和記念聖堂」は
このビルの完成の翌年に
手がけていると知って、
なおさら興味深く訪れました。

間口10メートル弱、
5階建の四角い箱形…
でも壁面の構成は複雑なもの。

2階から4階までの外壁は、
ガラスブロックと透明ガラスが、
水平連続窓をはめ込まれ、
村野の仕掛けが詰まっています。

両端にバルコニー状の凹み、
人は出られないそうです。

『国際建築』1954年4月号に発表の、
図面にもモチーフなどがみえます。
両端の手摺り状の部分はレリーフ、
「アダムとイヴ」をモチーフとか。
2階の両端で同じデザインが裏返し、
鏡像関係で設置されています。

画廊2階奥から堺筋側を見たところ。

村野は、天板をガラスとした
卓子(たくし)を好んだそうです。
下へ行くほど細くなる脚…
構造材の繊細さが際立っています。

こちらは傘立
調度品にも村野センスが光ります。

こちらは「2階社長室」。
堺筋に面するガラスブロック、
プラタナス並木の緑が
落ち着きを演出しています。

1965年の増築のときに、
設けられた階段…
1番下の段は地面から浮いたよう…
手摺の滑らかさがヨス。

ビル内の階段にもカーブが絶妙です。



いろいろな素材の組み合わせ…

ファサードは、
1階と中間層と最上層でデザインが
3つに分かれています。

このフジカワ画廊のファサードは、
戦後村野の窓のデザインの原点だと…
笠原一人さんはいう。
戦前の村野の窓のデザインには、
前面ガラスは採用されていません。

しかし、戦後になると…
柱は梁、壁で細かく区切ったり、
小さな窓をいくつか
組み合わせた「組窓」など、
新しい試みが見られるのです。

「…フジカワ画廊以前の作品に
このような過剰なヴォイドによる
複雑な「組窓」のような
デザインは見られない。
つまりフジカワ画廊は、
戦前と戦後の村野の
窓のデザインの変化の
分水嶺に位置づけられ、
戦後の村野の窓のデザインの原点
となる作品だと言えるだろう」※


「フジカワビル」
フジカワ画廊→
竣工年:1952年(昭和27)
設計 :村野・森建築事務所(村野藤吾)
構造 :鉄筋コンクリート造、地上4階・地下1階
所在地:大阪市中央区瓦町1-7-3

※「ヴォイド」とは?
建築物内の空所、空間の吹き抜けのことをVoid(空虚)と呼ぶ

※このブログは産経WEST【都市を生きる建築(56)】
幾何学的な構成と装飾共存…建築家珠玉の「フジカワビル」
 を参考にしました。

※参考文献
『村野藤吾のファサードデザイン
 図面資料に見るその世界』国書刊行会,2013年
「過剰なヴォイドーフジカワ画廊のファサードをめぐって」笠原一人


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