ライトのワーク山邑邸vol.4 色合いの巧妙


迎賓館という名が
付けられてますが、
邸宅としての機能を十分に備えています。

2階にある応接室の佇まいは、
迎賓というよりも、
大人の隠れ家的雰囲気が漂います。

真ん中に置かれている

二組ある机と椅子は、
オリジナルではありません。
左右にある作り付けの長椅子が、
もともと設えられたもの。

南側のテラスからの陽射し、
その陰影がシックな
落ち着きを演出しています。

左右対称の端正なデザイン。

そして連続する高窓が、
日中は陽射しを…

低い天井には間接照明が
施されて夜には違った
印象を魅せるのだそうです。

意匠の統一性が、
空間に調和をもたらしています。

重要文化財でもある山邑邸には、

修復工事が施されています。
ライトは自然素材しか用いなかった
という定説があったので、
壁面の色彩復原については、
かなりの試行錯誤があったそうです。

結論からいうと、
「『新建築』誌に記載された
 南信の竣工報告で、室内仕上げが
 全てペンキであることが
 記載されていたので
 決着することになりました。」
「大々的にペンキ塗の仕上げ」
であるがゆえ
生活の中で積み重ねられた、
様々な色の選択があったとも
想像できるということです。
茶褐色が応接室から廊下、
和室まで繋がっているいうこと。

手洗いも…
浴室のタイルも色調は、
茶褐色がベースになっています。
カラーリングではなく、
天井に幾何学的なデザインを
施すことによってアクセントが
付けられているのです。
4階の食堂は天井が中央部分で、
最も高くなる船底型。

装飾性に富んだ空間は、
食堂が儀式の空間であるという
欧米の思想に基づいていて、
教会なのか?と思わせる
厳粛さが支配しています。

小窓に取り付けられた木製飾りの、
カラーリングも茶褐色です。
天井の小窓からは
昼間は光が差し込み、
夜は月明かりに星空が眺める。

それぞれのスペースに時間的な
使われ方のリズムがあること、
どう明暗が変化するかの計算が、
設計要素の一つなのだと感じました。
4階の厨房のデザインも、
基本的には変わりがありません。

どのスペースに入っても、
カラーバランスが同じですから、
この建物で生きるあらゆる人に、
安らかな気分を奏でようと、
そんな仕掛けなのかも知れません。
同色であっても
照明と陽が当たるのでも違います。
場所によって全く違った色に
見えることに気づかされると、
色合いの妙に驚かせれます。
光の差しによって、
表情の変化は数えきれない
パターンをつくり上げるのです。
周りの木々の色

床や壁の反射


邸宅に用意された家具…
カラーリングのアクセントの
役割を演じています。
なぜ、
自然主義者であるライトの作品に、
このようなペンキ塗りを想定した
素材が選択されたのでしょうか。
ライトではなく、
遠藤新南信という若い世代の
判断がなされたということを
示しているのでしょう。

山邑邸では、
まずコンクリートの躯体に
わざわざ漆喰塗りして、
少しざらざらした状態にしてから、
ペンキを塗っています。

時代の継承を感じさる工法が、
大谷石と木と壁のハーモニーを
奏でていました。


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