西宮をあるく⑥ 秋晴れの「宮水」

江戸時代の酒は「秋落ち」といって
夏を越すと味が悪くなったそうです。
しかし、
西宮の酒だけは
秋を迎えてかえって味が冴え、
秋晴れ」と讃えられていたといいます。
西宮の酒だけに
なぜ「秋晴れ」が起きるのか??
理由は仕込み水の違いにあるから。
魚崎と西宮に蔵を持っていた
酒造家・山邑太左衛門が発見して以来、
灘の酒造家は「宮水」を
こぞって求めることになるのです。
 
宮水は、戎・札場筋・法安寺という
3つの地下水の強い流れである「伏流水」が、
地理的条件でブレンドされたもの。
宮水の成分は各地の酒造用水より、
リン・カリウム
その他の微量成分があいまって、
酵母の増殖促進させのだそうです。
宮水地帯の井戸の水面は
地表わずか2〜3mほど、
海水面とほとんど変わらないのです。
近代化工事などの海水の浸透、
揚水量の増加による井戸水の枯渇など、
危機と保全の歴史が繰り返されてきました。


この一角でのみ得られるのが「宮水」。
ところで…
宮水自体はおいしいのでしょうか?
ミネラル水でよくみる鉄分については、
酒を着色させたり、味を損ねることも
あるので嫌われます。
宮水の一般的な特徴は、
かなり塩分濃度の高いということ。
カルシウムイオンとナトリウムイオン、
そして硫酸イオンが主成分。
硫酸イオンについては、
「水を不味くする」ものでもあるので、
酒造りには名水であるが、
飲料向きの水とは違った水質ということ。

共同井戸場にある「いん洲第一泉」、
天下に名高い第一の水、
つまり
日本一の井戸という意味なのだそうです。
泉正宗、菊正宗、大黒正宗、
福寿、都美人など…
灘の銘酒の生命線が守られていました。


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