芦屋を駆け足にて⑤ 芦屋川の桜

業平橋」は芦屋川にかかる橋、
業平橋の東側は「業平町」という町名。
「在原業平」とのゆかりは、
業平橋のたもとに在原業平の別荘が
あったと伝わるところにあります。
この業平橋は、
谷崎潤一郎の『細雪」にも…

「…今日はそう云う大雨なので、
 学校まで悦子を送り届けて置いて、
 帰って来たのは八時半頃であっただろうか。
 途中彼女は、余り降り方が物凄いのと、
 自警団の青年などが水の警戒に駈け歩いているので、
 廻り道をして芦屋川の堤防の上へ出、
 水量の増した川の様子を見て戻って来て、
 業平橋の辺は大変でございます、
 水が恐ろしい勢でもうすぐ橋に着きそうに
 流れておりますなどと語っていたが、
 それでもまだそんな大事に至ろうとは
 予想すべくもなかった。…」。
『細雪』の大雨はおそらく1928年に起きた
阪神大水害」のことなのだろうと思います。
国交省 近畿地方整備局 六甲砂防事務所のHPには、
当時の有り様がこんな写真で紹介されています。
冠水した業平橋
ふだんはおとなしい芦屋川…
川沿いには芦屋らしい建物が立ち並ぶ。
こちらは「カトリック芦屋教会」。
1953年に竣工したもので、
あの広島の世界平和記念聖堂を設計した
村野藤吾 さんが憧れていたという、
長谷部鋭吉(はせべ・えいきち)さんの手になる。

業平橋を越えると見えるのが、
芦屋市民センター ルナ・ホール」。
コンクリートの打ちっぱなし感がよい。
今は表面塗装が施されているのですが、
表面にあるコンクリートのリブ
圧迫感をほどよく
解してくれているように思います。
設計は坂倉建築研究所。
主宰の 坂倉準三さんは、
フランスでル・コルビュジェに弟子入りした、
日本での戦後モダニズムを牽引した人。

桜のレリーフで橋は彩られていました。
桜の季節にまた訪れられると…いいなぁ〜。
世の中の絶えて桜のなかりせば
 春の心はのどけからまし」在原業平

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