日本人の嗜好をさぐる㉘ 西瓜


雑画巻》より 閻魔大王の西瓜
 懐月堂安度

夏といえばスイカ
歴史はとても古く、
アフリカの砂漠地帯で
2500万年以上前から
存在していたそうです。
ただ野生種は味が安定せず、
栽培が始まったのは、
およそ4000年のエジプト。
ツタンカーメン王墓からも
スイカの種が発見されていて、
壁画にも描かれているとか。

日本への伝来は諸説あり、
ポルトガル人が長崎へ
カボチャとともに
持ち込まれたとされています。
栽培が始まったのは
江戸時代後期になってから…
農業全書』に農法の
記述を見ることができます。

世界的に赤いスイカが登場するのは、
14世紀のイタリアで出版された
生活指南書『健康全書』。
ジョバンニ・スタンキ
静物画》にみえるスイカは、
白い部分が目立ちます。

《西瓜図》
 葛飾北斎 1839年

北斎晩年の傑作の一つ…
曲がりくねった皮、
鋭利な刃先を手前に向けた
画面構成と質感の違い、
技法上の卓越さが際立つ。
紅白の西瓜の皮のナゾ?
《西瓜図》とありますが、
実は画題は宮中の七夕行事
乞巧奠” を描いたものです。

七夕 乞巧奠巌如春

皮は糸の七夕飾り、種は星たち、
包丁は天の川でその白点は
織姫星と彦星という見立て。
八十歳を越えた北斎が、
西瓜に宇宙を描き込んだのです。

《西瓜と包丁》
 葛飾北斎

もう一つの北斎の西瓜…
別モノのようですね。
試みの作画やも知れませぬ。

《十二月ノ内 水無月土用干》
 歌川豊国


農業全書』(1696)に
たねに色々あり。
 じゃがたらと云うあり。
 肉赤く味勝れたり。
」とあり、
すでに品種の存在がみえます。
1702年『摂津名所図会』のなかに、
津の国に古くから名産地があり、
鳴尾西瓜」は味豊かな
一品だったといわれています。

豊国の西瓜をみると、
賽ノ目で切り分けています。

《五行之内 西瓜の水性》
 歌川国芳
1844-45年

庶民が口にするようになると、
種をこんな風に外している、
そんな所作も団扇絵に。

《江戸名所道化尽
     十九 大橋の三ツ股》
 歌川広重


江戸中期になると
換金作物として栽培され
始めたことようで、
西瓜売りがあちこちに。

《東都名所
高輪
  廿六夜待遊興之図》
 歌川広重 部分

『津木六部耕種法』のなかに、
反当利益が、
 稲一両二分に対して
 西瓜十両
」とあり、
一般販売され、品種意識も
進んでいたそうです。

《西瓜の陸揚げ》
 葛飾北斎


フランス国立博物館から
里帰りされた肉筆画で、
最近の研究で北斎の筆とする
説が有力視されている画。

《西瓜図》
 速水御舟
1923年


《オランダ皿の静物》
 山口蓬春
1957年

近代になれるにつれて、
描かれる西瓜も、
少し小ぶりになるようです。

《於御浜御殿徳川大樹御船手
  西瓜合戦上覧之図》
 月岡芳年

紅白に分かれた御船手組が
西瓜を取り合うの図
浜御殿では徳川将軍が上覧、
紙風船や達磨が空中に舞い、
花火も上がっています。

《古代踊尽し 盆のおどり》
 歌川広重


スイカの英名の watermelon
日陰の涼しい場所に置いておけば、
数カ月間保存が効くため、
古代エジプト人は水分貯蔵のため、
スイカを栽培するようになった…
日本での果物のことを
"水菓子"に通ずるのか…知らんけど。



※ジョバンニ・スタンキの
 西瓜の記事を参考にしました。
 悪魔の実かよ!500年前のスイカがホラー


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